なぜ山善の「焼肉グリル」は25万台も売れたのか 開発のヒントが面白い:水曜日に「へえ」な話(2/4 ページ)
山善の「焼肉グリルシリーズ」が売れている。第1弾が登場したのは、2020年7月のこと。その後、第2弾、第3弾を投入し、22年7月現在で累計25万台を突破した。なぜホットプレートがこれほどウケているのだろうか。人気の秘密を取材したところ……。
商品開発のヒントは「雨どい」
ここ数年、他社の製品を含めて、ホットプレートはよく売れている。なぜか。ちょっと古いデータになるが、日本電機工業会が21年1月に発表した国内出荷実績(1〜12月)によると、ホットプレートは対前年比40.6%増の106億3300万円である。好調の理由は、ひとことで言って「巣ごもり需要」である。
新型コロナの感染が広まって、外食を控えざるを得なくなった。「じゃあ、家で焼肉を食べようー」となって、ホットプレートを購入する人が増えたというわけだ。こうした外部環境があったので、山善の「焼肉グリル」だけが売れたわけではない。ただ、いまは外出制限が緩和された。ということもあって、全体的に売り上げが減少傾向にある中でも、「『焼肉グリル』は落ち込むことなく、好調を維持している」(担当者)という。
「焼肉グリル」の最大の特徴は、先ほど紹介したように、肉を焼いたときにでてくる「煙」と「油」をできるだけ抑えていることだ。自宅で焼肉をするときにホットプレートを使うと、換気をしていても「煙」と「油」に悩まされるものだが、同製品はプレートに「Xカット構造」を導入したことによって、2つの“敵”を抑え込んでいるのだ。
プレートの表面は格子状になっているが、裏面を見ると、細かな四角すいが並んでいる。表面から流れてきた油がその四角すいにまとわりついて、プレートの下にある受け皿に落ちる。プレートに余分な脂が残っていると、それが煙の原因になるので、油をできるだけ速く、四角すいの先端付近にまとわりつくように設計されているのだ。
煙が出にくい構造を説明すると「なーんだ、そーいうことなのね。わりとシンプル。オレでもできそう」などと感じて、開発者の苦労を知らずに、焼肉を食べ始める人も多いかもしれない。「ゼロからイチ」をつくりだすことは、とても苦労するケースが多く、同社の担当者も想像以上の困難を乗り越えてきたに違いない。
「焼肉グリル」の生みの親である近藤富昭さんに聞いたところ、「『雨どい』の形をヒントにしました。『雨どい』を見ていると、水がどんどん下に流れていきますよね。この構造をホットプレートにも取り入れれば、油がスムーズに流れていって、煙を抑えた製品ができるのではないかと考えました」とのこと。
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