企業に上から目線の「カスハラおじさん」が、大量発生しているワケ:スピン経済の歩き方(5/7 ページ)
「お客」という立場を生かして、店のスタッフなどに理不尽な要求をする「カスハラ」が増えているという。さまざまな調査をみると、カスハラの正体は中高年の男性のようで。なぜ、こうした層がむちゃくちゃな要求をするのか。背景に何があるのかというと……。
「上から目線」の日本人を大量生産
このような思い込みが強くなった人を池田氏は「バカ」と位置付けている。偏差値が低いとか、知識が足りないということではなく、「違うものを同じだと見なす」ことをこじらせて、「自分と異なる同一性」が世の中にあることが理解できなくなったしまったことが「バカ」だという。
このような状態に陥った人は他者とのコミュニケーションが成立しないうえ、「自分と異なる同一性」を執拗(しつよう)に攻撃することしかできないからだ。
近年のネット炎上、モンスタークレーマー、あおり運転、陰謀論の流布などは、すべてこのようなに「自分は絶対に正しい」と思い込む「バカ」が増えているからだという。
そんな生物学的、脳機能学的にハラスメントの構造を分析していく本書の中で、筆者が目からウロコが落ちたのは、なぜ日本では「バカ」が大量生産されていくのかの考察だ。池田氏は幼いころから「規則を守れ」ということを徹底的に叩き込む日本の教育システムのせいだとしている。
『日本の教育現場では、小さい頃から「みんなで仲良く」「みんな平等に」「みんなで考えよう」ってことを事あるごとに叩き込まれたと思う。これまで話をしてきた「同一性」という点で言えば、「日本人はみんな同じ同一性をもっているし、もつべきなのだから、それを大切にしましょう」ってことだ。(中略)これは典型的な「バカ」の考え方だ」(P.160)
つまり、われわれは幼いころから「個性」や「多様性」というものを「みんなに迷惑をかける悪いこと」と徹底的に叩き込まれ、とにかくルールに従うことが「善」と教え込まれる。そのような「ルール至上主義」が、「オレが言っていることが正しいのだから店側は謝罪すべき」「オレが感じていることは世間の常識なので、それに反する非常識な人間には、どんなひどいことをしても許される」という「上から目線」の日本人を大量生産しているというわけだ。
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