企業に上から目線の「カスハラおじさん」が、大量発生しているワケ:スピン経済の歩き方(4/7 ページ)
「お客」という立場を生かして、店のスタッフなどに理不尽な要求をする「カスハラ」が増えているという。さまざまな調査をみると、カスハラの正体は中高年の男性のようで。なぜ、こうした層がむちゃくちゃな要求をするのか。背景に何があるのかというと……。
コロナ禍による「ルール至上主義」
なぜ日本では、パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が施行され、連日のようなメディアで「パワハラは最低」と呼びかけているにもかかわらず、パワハラの相談件数が右肩上がりで増えているのか。
なぜ「医療従事者に感謝」とか「多様性を認めよう」などという美しいスローガンを叫ぶ人がたくさんいるのに、その真逆のような「カスハラ」が増えているのか。
この不可解な現象は、「40代以降のおじさんたちのメンタルが急速に悪化して、周囲に八つ当たりをしている」と考えるとすべて説明できる。そしてこの悪循環をさらに拍車をかけたのが、「コロナ禍によるルール至上主義」だったのではないかと個人的には思っている。
この2年あまり、われわれはさまざまな「社会のルール」に従ってきた。マスク、手洗い、うがい、感染者が増えたら帰省や旅行をしないなど、法的根拠はゼロだが、「みんなに迷惑をかけてはいけない」という理由から「日本人なら守るのが当たり前」として国民の間に定着している。
ただ、一方でこれらの「社会のルール」を理不尽だと感じる人も多かった。例えば、欧米社会が早々に「脱マスク」しているのに対して、日本人は生真面目にマスクをし続けているのに、感染者数は過去最多に跳ね上がった。「マスクなんて意味ないんじゃない?」という本音を押し殺して、「みんなつけている」「心配性の人に文句を言われたら面倒」などの理由で、「納得できないルール」に渋々従っている日本人もかなりいるのだ。
このような「ルールへの服従」という社会圧力が、ハラスメントを急増させた可能性がある。
「理不尽なルール」を押し付けられた人は、「自分は絶対に正しい」と信じて疑わず、他者を攻撃するような「バカ」になる、という指摘があるのだ。生物学者の池田清彦氏が上梓した『バカの災厄』(宝島社新書)によれば、他の生物と違って、人間だけが「違うものを同じだと見なす」と思い込む、特殊な能力があるという。
関連記事
- ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。 - 登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。 - 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - 人手不足は本当に「悪」なのか 騙され続ける日本人
人手不足が原因で倒産する企業が増えているようだ。東京商工リサーチのデータをみると、前年度から28.6%も増えて、過去最高を更新している。数字をみると、「人手不足=悪」のように感じるが、本当にそうなのか。筆者の窪田氏は違う見方をしていて……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.