絶対に言ってはいけない、部下へのNGアドバイス:働き方の「今」を知る(1/6 ページ)
「私の若い頃は……」「お前のためを思って……」など、上司が自己満足で行うアドバイスは部下に嫌われ、信頼低下につながりかねない。正しくアドバイスを伝え、部下を導くにはどうしたらいいのか。見落としがちなコミュニケーションのポイントを解説する。
人はなぜ、説教やアドバイスをしたがるのか。それは「気持ちがいい」からだ。
米ハーバード大学社会的認知・情動神経科学研究所の研究チームが発表した論文によると、自分の感情や考えなどを他者に伝える「自己開示」によって、脳内では快楽物質ドーパミンに関連する領域が反応を起こしているのだという。ドーパミンは報酬への期待や満足感に関係する化学物質だ。すなわち、人は自分のことを話す時、脳は食事や性行為で得られる満足感と同じような快楽を感じているのだそうだ(外部関連記事)。
アドバイスは精神的な快楽のみならず、自己肯定感も高めてくれる効果がある。誰かに「教える」という行為は、その瞬間、教えている相手よりも自分が優位な立場におり、能力的にも優れているという確信を与えてくれる。アドバイスを通じて自分が誰かの役に立てている、価値発揮できているという承認欲求も満たされる。
これほど手軽に精神的な充足感を得られる手段は他になかなかない。道理で、愚にもつかない独り善がりなアドバイスが世の中にあふれているわけである。
「頼んでもいないのに、相手に配慮した風を装い、一方的に『余計なお世話』のようなアドバイスをする行為や人」は、ときに「教え魔」や「クソバイス」という俗語で呼ばれ、強く忌避されている。さらには、主に男性が、相手を無知と決めつけて何かを解説したり、知識をひけらかしたりすることを指す「マンスプレイニング(Mansplaining)」という言葉さえ存在する。
実際、クソバイスについて論じた書籍も存在するし、スポーツジムやゴルフ練習場、ボウリング場などで「教え魔に注意」といった喚起がなされている旨が報道されたこともあった。マンスプレイニングは比較的新しい用語だが、2010年にはニューヨーク・タイムズの「ワード・オブ・ザ・イヤー」に選ばれ、18年には英語辞書の最大手オックスフォード英語辞典にも掲載されている。迷惑なアドバイザーの存在は世界共通のようだ。
いずれも、教える側は善意で近づき、良かれと思ってやっているのかもしれないが、教えられるほうは邪魔なうえに断りづらい。周囲から迷惑がられていることに気付けないまま繰り返してしまえば、さらに信頼を無くしてしまうことになる悪循環だ。
そんな痛々しい、空虚なアドバイザーにならないために留意しておくべきことがある。それは、「アドバイスは相手が求めたときだけにする」ことと、「『昔話』と『自慢話』は封印する」ことだ。
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