「巨大で成長している市場」だけど油断は禁物 ヘルスケアビジネスで勝ち残る8つのポイント:目指す方向性とは(2/3 ページ)
ヘルスケア市場に参入する企業が相次いでいる。一方で思うように結果を出せない企業もある。成功するためのポイントとは?
参入目指す企業が多い
この成長性を背景にヘルスケアマーケットへは大手、ベンチャー、製薬会社から食品・飲料メーカー、IT企業までさまざまなプレーヤーが参入を試みてきました。
米アップルのCEOティムクックは19年、CNBCのインタビューにおいて「未来から現代を振り返り、“Appleが人類にもたらした最大の貢献はなんだったのか”と問うならば、その答えは“健康”になるでしょう」と述べています。
同社はApple Watchによる健康データ管理のみならず睡眠、心臓、呼吸、血糖値、認知症などさまざまな分野のサービスやテクノロジーを展開しています。世界をけん引するアップル、アマゾン、グーグル、ウォルマートなどが積極果敢にヘルスケアマーケットに取り組んでいます。
日本においては、各社が手を組んで新たなサービスを開発する動きが盛んです。塩野義製薬は注意欠陥多動性障害(ADHD)の子どもたちの注意機能改善に寄与するゲームを手掛ける米Akili Interactive Labsと戦略パートナー契約を結び、サービス開発を推進。第一生命保険は視覚認知テストにより認知症の予兆を検出するツールを開発した米Neurotrackと事業提携を行い、認知症保険の付帯サービスとしてアプリを提供しています。
こうした事例以外にも、ホンダとドイツnooneeによる腰痛防止のウェアラブルチェア開発、オムロンヘルスケアと米AliveCorの心電計と血圧計の一体化、SOMPOホールディングとイスラエルのBinah.aiによるストレスチェック&血圧測定など、各社のリソースを活用した事業連携が増加しています。
しかし、これら多くの取り組みもまだ道半ばという様相です。
ヘルスケアビジネスのゴールとは何でしょうか。サービス提供企業が数千億円規模に拡大することでしょうか、それとも数千万人規模の健康に貢献したという成果の数値が出ることでしょうか。
このゴール設定、ヘルスケアビジネスの意義をどこに置くかによってこれから歩む道は大きく変化します。
「N-NOSE」というがんの検査サービスがあります。テレビCMで見てご存じの方も多いのではないでしょうか。
人間ドックの「腫瘍マーカー」の場合、早期のがんの検知精度は10%程度ですが、N-NOSEなら86.3%という高感度でがんを検知できるそうです。キット代は1万2500円〜という価格で、病院で受けるがん検診よりもリーズナブルです。21年度の売り上げで30億円以上、22年度は120億円を目指しているそうです(出所:21年11月TBS系「がっちりマンデー!!」での同社コメントより)。
売り上げ120億円と1万2500円という数字から推計すると、年間約96万人がこのサービスを利用していることになります。96万人の人たちの中には、ネガティブな結果が出ずに安堵する人もいれば、早期発見をして命を救われる人もいると思われます。これは、今まで人類が達成することが出来なかった一つの大きな価値です。では、これがヘルスケアビジネスのゴールといえるでしょうか。同社の経営哲学やビジネス構想によっては、まだビジネスが軌道に乗り出した段階と捉えることもできるかもしれません。
関連記事
- レゴランドってそんなにひどいの? 家族を連れて行ってみた
「隣接する商業施設からテナントが撤退」「水筒の持ち込み禁止」などのニュースで注目を浴びているレゴランド。ネット上では酷評する声もあるが、実際はどうなのだろうか。記者が家族を連れて遊びに行ってみた。 - なぜ女子の半分が泳いでないの? ジェンダーレス水着の開発者が語った“忘れられない光景”
フットマークのジェンダーレス水着が話題になっている。性の悩みだけでなく、さまざまな理由で「肌を隠したい」生徒のニーズに対応するのが狙い。開発者にその背景を聞いた。 - パソナの淡路島移転計画はどうなっている? 家族で引っ越した社員が語ったリアルな日常
パソナが着々と社員の淡路島移住を進めている。実際に働いている社員はどういったことを考えているのか。現地で増えている商業施設の状況も取材した。 - 290円ラーメンに250円定食 びっくりドンキー、幸楽苑、なか卯で進む「朝食革命」の正体
朝食に力を入れる外食チェーンや飲食店の動きが目立ってきた。ハンバーグ専門店「びっくりドンキー」、タピオカや台湾料理の専門店「春水堂」などが参入している。どのような戦略を打ち出しているのか。 - スシローとくら寿司 「価格帯」と「シャリ」から見えた戦略の“決定的”な違いとは
大手回転寿司チェーンのスシローとくら寿司。標準的な寿司の重さはほぼ一緒。しかし、価格とシャリの違いから戦略の違いが見えてきた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.