東芝に売られた事業が軒並み好調な事情:ぐんぐん成長(2/3 ページ)
2016年以降、東芝に売られた事業は、医療機器事業、白物家電事業、スマートメーター事業、メモリ事業、パソコン事業、テレビ事業と目白押しだ。そしていずれも見事に独り立ちして成長しているのだ。その意味を考えてみたい。
2018年にシャープに売却されたパソコン事業(旧: 東芝クライアントソリューション)、Dynabook(ダイナブック。東京都)は利用者ファンも多く、しかも身売り先が病み上がり状態のシャープだということで、その身売り話に驚いた向きも多かったはずだ。しかし同社はその後、復活の軌跡を示している。
確かに売却直後の2019 年度は営業利益・経常利益・最終利益とも赤字だったが、2020年度と2021年度の連続で黒字を達成し、今や「22年度内には上場を目指す」とアナウンスしている。欧州市場での販路拡大に成功したことが、この結果に結びついている模様だ。
同じ2018年に中国・海信集団(ハイセンス)に売却されたテレビ事業(旧・東芝映像ソリューション)、TVS REGZA(川崎市)もまた大きな復活を遂げている。
ハイセンス傘下となった後、同事業体は販売網の混乱などで一時的にシェアが落ちたものの、その後大きく飛躍。2020年12月期には黒字に転換、今や日本市場ではトップシェア争いをするところまで業績を回復している。市場の評価では、ブランド力に加えコスパの良さでも消費者に支持されているようだ。
東芝から売却された事業の中でも最大物がメモリ事業、今のキオクシア(本社:東京都)である(正確には東芝のメモリ事業を会社分割により2017年4月に事業継承した東芝メモリ株式会社が2019年10月に現在の社名に変更)。業績はおおむね好調である。テレビCMを打てる余裕もあるようで、会社の認知度は昔より格段に高いのではないか。
業績推移を見ると、売上高こそ一見大幅に縮小しているように見えるが、そもそもメモリ事業(製品としてはNANDフラッシュメモリ)だけに集中したからだ。2019年度には独立に伴うコスト負担と、世界的な顧客の巨大データセンター投資需要が一服したことで、また2020年度には世界的コロナ禍と米中分断による市場の混乱が大きく、連続で赤字を計上している。しかし2021年度には、世界的に半導体需要が回復したことで売上も利益も大幅に拡大している。
メモリ市場では今後も市況の乱高下は避けられないし、世界トップレベルでの投資・価格競争が続くことも間違いない。しかし少なくとも、とんでもない巨額の投資を了承してもらうために親会社の顔色を伺っているうちに投資タイミングを逃すという、日本企業の惨めな失敗パターンに陥る可能性は小さくなっている。
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