東芝に売られた事業が軒並み好調な事情:ぐんぐん成長(3/3 ページ)
2016年以降、東芝に売られた事業は、医療機器事業、白物家電事業、スマートメーター事業、メモリ事業、パソコン事業、テレビ事業と目白押しだ。そしていずれも見事に独り立ちして成長しているのだ。その意味を考えてみたい。
さて、こうやって見てくると、東芝から売却された事業のいずれもが好調になっていることが明確になってくる。多くは自らの、または新・親会社の資金やノウハウをうまく活用して新しい成長の階段を上っている。
もちろん、医療機器事業のように、元々しっかりと稼げる事業だったからこそ高く売れる見込みがあり、そのために喉から手が出るほど現金が欲しかった東芝の経営陣が、キャッシュ創出策の目玉として泣く泣く選んで売却した事業もある。しかし多くは、売却前には業績的にはぱっとしなかったのに、売却を期に経営的自由度と新しい親会社(または株主)の理解・支援を得て復活しているのだ。
逆に言うと、東芝社内に抱え込まれていた間は、「事業の特性や勘所を理解できない」親会社のトップ経営陣の「口は出すけど金は出さない」態度のせいで成長の芽を摘み取られていたのが、東芝の「くびき」を逃れたことで大きく飛躍できるようになったことが分かる。
こうしたことが背景にあるため、小生は先頃大株主の反対で引っ込めてしまった東芝自身の分割案に対し「本質的には弥縫策だが、結果オーライになる可能性がある」と考えていたのだ(記事『東芝の会社分割は本当に企業再生につながるのか?』)。つまり、あまりに巨大なコングロマリットを経営する能力がない人たちに経営判断させる状態よりは、分割して事業単位に近い大きさにした上で経営判断させるようになったほうが間違いは減るはずだ、と。
こうした「金の卵がみすみす孵化の機会を失ってしまう」状況は東芝に限らないと小生には思える。事業側は本当に自信があるなら、外部に売却してもらうよう自ら親会社の経営トップに直訴してもよいのではないか。
一方、東芝のように苦し紛れになって事業を切り売りする羽目になった経営トップは気をつけたほうがいい。売り飛ばした事業が黒字化しぐんぐん成長するのを目の当たりにする場合、それはあなた方に対し「無能経営者」の烙印が突き付けられていることを意味するからだ。(日沖 博道)
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