キリンはなぜ「道場」でDX人材を育成するか その真意:「可視化」「効率化」だけではダメ(1/3 ページ)
自社の今後を考えると、DXの取り組みは必須。しかし、推進役の人材がいない──。多くの企業に共通する課題だ。採用のアプローチを工夫する企業もあれば、人材育成に投資する企業もある。キリンホールディングスの場合は、「DX道場」を立ち上げた。
自社の今後を考えると、DXの取り組みは必須。しかし、推進役の人材がいない──。多くの企業に共通する課題だ。
採用のアプローチを工夫する企業もあれば、人材育成に投資する企業もある。キリンホールディングスの場合は、「DX道場」を立ち上げた。
単なる育成プログラムではなく、「道場」とした真意とは? 仕掛け人の1人である経営企画部 DX戦略推進室 主幹 近藤龍介氏に話を聞いた。
育成プログラムではなく「DX道場」 何が違う?
キリンホールディングスは2021年7月から、「DX道場」と呼ばれるユニークなDX人材育成施策を実施している。DX道場は白帯、黒帯、師範の3コースに分かれており、それぞれ所定の講義を修了し、最後に課題を提出して「合格」のお墨付きをもらうと晴れて免許皆伝となる。
近藤氏は、同社内のDX人材育成の強化に乗り出した背景について次のように話す。
「19年に策定した当社の中期経営計画『KV2027』では、イノベーションを実現する4つの組織能力の1つとして『価値創造を加速するICT』を打ち出しています。これを実現するためにDX戦略推進室という部署を20年に立ち上げましたが、専門組織による取り組みだけではどうしても限界がありました」
特定の組織の限られた人員だけでDXを推し進めようとしてもどうしてもスピード感に限界が生じ、また業務現場や事業環境の実態に即した施策をタイムリーに打ち出すことも難しい。そこで、顧客とより近い距離にいる業務現場の従業員が、事業の実態に即したDX施策をスピーディーに発案・実施できるよう、社内のDX人材育成に力を入れることにしたという。
その主要施策として新たに立ち上げたのが、従業員向けのDX人材育成プログラム「DX道場」だった。21年7月の開講以来1年強の間で、既にプログラム修了者の数は白帯コースが650人、黒帯コースが150人、師範コースが70人に上る。
あえて「道場」というユニークなネーミングを採用した理由について、近藤氏は「カルチャースクールのように『何となく知識を身に付けておしまい』ではなく、『デジタル技術を活用して事業課題を解決する人材になるんだ!』という強い意思や覚悟をもって門を叩いてほしいという思いを込めました」と語る。
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