ご当地バーガー「ラッキーピエロ」は、なぜ函館で圧倒的に強いのか:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
北海道・函館にある「ご当地バーガー」をご存じだろうか。その名は「ラッキーピエロ」。地元の人からは「ラッピ」の愛称で呼ばれているが、どのような特徴があるのだろうか。マクドナルドやモスバーガーなどの全国チェーンとは違って……。
「クセの強い店舗」がウリ
このようなフランチャイズと真逆の戦略をラッピは意識して進めている。創業者の王一郎会長は、ラッキーピエロの公式Webサイトで、2つのパティとコロッケ、目玉焼きの入ったTHEフトッチョバーガーを引き合いに出して、同社の戦略についてこう説明している。
『他のナショナルチェーンさんが単価と時間にこだわるとすれば、私どもはこだわった味と楽しさですね。THEフトッチョバーガーなんて効率という事を考えたら、3個分のハンバーガーを安く出して、作るのも大変で、わざわざ 鐘を鳴らしてお持ちするという手間隙をかけています。じゃあ、私どもは何を売っているのかと言ったら、それを食べてくださる体験、面白さ、それを周りで見る可笑しさ、愉快さをお売りしているんです。私どもは、チェーン店部門から考えるとメニューが多すぎるし非効率的です。ですが、私達は常にお客様と美味しい事、楽しい事を共に分かち合いたいし、考え願っています』
全国チェーンと差別化をしていくために、非効率でも楽しいことを追求する――。そんなラッキーピエロの戦略を体現しているのが、強烈な個性が売りの「クセの強い店舗」だ。
実は展開している17店舗のコンセプトはそれぞれ違う。例えば、峠下総本店(とうげしたそうほんてん)の特徴は以下のようになっている。
『約3000坪の土地に約300坪のログハウス風建物 テーマパークレストランバードウォッチング館、世界の鳥たちをテーマにカラーはラッピグリーンで統一。メリーゴーランド、池、ヤギの「ゆきちゃん」、バジルガーデン等盛り沢山のラッキーピエロ1大型店。また、冬期間中PM18:00〜20:00には素敵なイルミネーションが見られます』(同社Webサイト)
一方、港北大前店は峠下総本店と同じ系列なのかと疑ってしまうほど、以下のようにかけ離れた世界観だ。
『1950年代のアメリカを思わせる店、プレスリーが青春だった「ラッキーピエロ港北大前店」です。アンティークな雰囲気の店内で、出達うのは最高の味』
この「クセの強い店舗」こそ、ラッキーピエロが「観光スポット化」した理由のひとつだ。函館観光に訪れた人々の中には、1店舗だけに行って終わりではなく、個性豊かな店舗をハシゴして回っていくという「ラッピめぐり」をする人もいるのだ。
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