KDDI通信障害で注目「非常時ローミング」 ウクライナや米韓、カナダでは? 比較から日本の対応考える:房野麻子の「モバイルチェック」(2/4 ページ)
総務省では現在、災害や通信障害で携帯電話が使えなくなっても、他事業者のネットワークを使うことで通信できるようにする「非常時における事業者間ローミングの実現」を検討している。第1回と第2回会合では、海外における事業者間ローミングの導入例が紹介された。これから導入しようとしている日本にとって参考になる内容だ。
カナダは12社が覚書を締結
詳しく紹介されたのはカナダの導入事例だ。カナダでは今年7月8日、大手通信事業者「Rogers Communications」で19時間に渡って携帯電話が不通になる大規模な通信障害が発生し、1000万人以上のユーザーに影響があった。その事故後、カナダの通信を管轄するイノベーション・科学経済開発大臣は、各通信事業者のCEOを招集し、緊急ローミングと事業者間の障害時の相互支援、国民・政府に対する情報開示について事業者間で合意するように指示を出した。その結果、12社の通信事業者がMOU(覚書)を締結。9月に大臣がその旨を公表した。
MOUの有効期間は5年間で、その後1年ごとに自動更新される。MOUには、技術的に可能な場合は、音声通話、テキスト、データのローミングを提供することが記されているが、詳しくは事業社間で個別にローミング協定を締結する形になっている。そのため、具体的な内容が分からない部分もある。
ローミングを開始するタイミングは、障害を起こした事業者がローミングを始める宣言を他事業者に電話連絡したとき。救済する事業者は、自社の顧客に著しい悪影響を及ぼさない合理的な範囲内でローミングを提供する。ローミング提供中、緊急通報は優先して取り扱われ、障害が復旧した時点でローミングは速やかに停止させる。また、救済事業者は、障害を起こした事業者に対して「障害の状況説明」「発生場所」「障害の推定継続時間」など各種情報を要求することができ、障害を起こした事業者は情報提供に向けて努力することが求められている。
共有する情報。障害の状況や発生場所、推定される障害の継続時間、影響を受けるネットワークノードのほか、緊急ローミングを提供する他事業者に関する情報、必要な緊急ローミングの種類と量、つまり加入者数、セッション数、トラフィック量に関する見積もり情報を提供することが求められる(総務省の第2回検討会資料より)
通信障害を起こした事業者に対しては、建物、車両、機器、人材、場合によっては周波数をシェアして互いに支援しあう。また、通信障害が起きた場合には、手順に従って利用者、国民、政府に対して、障害の状況について速やかに情報を提供することになっている。その手順も策定し、毎年見直すという。
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