KDDI通信障害で注目「非常時ローミング」 ウクライナや米韓、カナダでは? 比較から日本の対応考える:房野麻子の「モバイルチェック」(4/4 ページ)
総務省では現在、災害や通信障害で携帯電話が使えなくなっても、他事業者のネットワークを使うことで通信できるようにする「非常時における事業者間ローミングの実現」を検討している。第1回と第2回会合では、海外における事業者間ローミングの導入例が紹介された。これから導入しようとしている日本にとって参考になる内容だ。
気になる費用負担だが、確認できている3カ国は、事業者間の協定で処理されるので民間負担となっている。
カナダのアジェンダでも、ユーザーにはしっかり状況を伝え、周知・広報すべきとされているが、日本においてもユーザーに対する周知・広報は非常に重要な視点になる。7月のKDDIの通信障害では、周知・広報が不十分だった、分かりにくかったという指摘が多かった。事業者のWebサイトで告知しても、通信障害でデータ通信ができないので、ユーザーはサイトにアクセスして状況を把握することができない。SNSなどでは困ったユーザーがショップに押し寄せたという報告もあった。
実現を希望する機能「緊急通報」がトップ
対象となる通信や通信品質についても検討ポイントとなるだろう。第2回会合では野村総合研究所が行った「携帯電話の通信障害に関するアンケート調査」の結果も公表された。事業者間ローミングについては、年代を問わず約4人に3人が必要と回答しているが、実現してほしい機能としては緊急通報が圧倒的に多く、まずは「人命に関わる緊急通報(呼び返しなし)を1日も早く実現することが望まれる」とまとめている。
一方で、日常的に使われるようになったPayPayなどのコード決済は、認証にSMSを利用することが多く、通信障害で決済できなかったケースもあった。そのため、通話やメッセージ、データ通信もローミング対象にするべきという意見もある。
ローミング時の通信品質も検討すべきポイントになるだろう。ウクライナでは、携帯電話サービスが全く受けられないよりは、低品質であっても確保するという方針になっている。日本ではどう考えるかといったことも、検討会で話し合われていくことだろう。
筆者プロフィール:房野麻子
大学卒業後、新卒で某百貨店に就職。その後、出版社に転職。男性向けモノ情報誌、携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年にフリーランスライターとして独立。モバイル業界を中心に取材し、『ITmedia Mobile』などのWeb媒体や雑誌で執筆活動を行っている。最近は『ITmedia ビジネスオンライン』にて人事・総務系ジャンルにもチャレンジしている。
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