1円玉より小さい面に87文字 印鑑メーカー「極限の技」に大反響 なぜ作った?:ハンコ業界盛り上げたい
1円玉よりも一回り小さい円の中に、びっしりと刻まれた87の小さな文字。島根県の印鑑メーカーが製作した印鑑に、大きな反響が広がっている。社歴20年の職人らが半日近く付きっきりで作業し、完成させた。
1円玉よりも一回り小さい円の中に、びっしりと刻まれた87の小さな文字。島根県の印鑑メーカーが製作した印鑑に、大きな反響が広がっている。社歴20年の職人らが半日近く、付きっきりで作業し完成させた。デジタル化で押印文化に逆風が吹く中、印章業界を盛り上げたいとの狙いがあるという。
製造したのは、島根県松江市で印鑑、ゴム印などの製造・販売を手掛ける「永江印祥堂」。島根県産のヒノキを使用した印鑑で、直径1.2センチの面には「こんにちは。島根県にある小さなハンコ屋が1.2センチの印鑑の中で限界の文字数に挑戦しています。今回は87文字に挑戦。しっかり読めていますね!これが職人の技術なんです!すごいでしょ。」と刻印している。
すごいの彫れた――。同社が10月12日に画像とともに発信したTwitter投稿には、同18日時点で22万5000件を超える「いいね」が押され、その技術力を賞賛する声が多数寄せられている。
同社は1970年に創業。これまでに個人の印鑑だけでなく、企業からの依頼も多数受けてきた。企業の印鑑は、企業名や部署名など彫刻する文字数が多い。同社の担当者は「できる限り文字数制限をかけないように創業当初から企業努力を重ねてきた」と説明する。
10月初旬に60文字を彫刻した印鑑を製作し、Twitterに投稿したところ話題になり、「さらに文字数が多い印鑑を見てみたい」とのリクエストが届いたことから、87文字に挑戦。社歴20年の職人を中心に、計6人が各工程ごとに分かれ、半日がかりで完成にこぎつけた。87文字は同社として過去最多の文字数だという。
印章業界は近年、デジタル化の波で逆風が吹く。政府は2020年9月、押印が必要なおよそ1万5000の行政手続きのうち、99%超を廃止する方針を表明。21年4月以降、順次、押印廃止が進められている。一方で、法人登記や不動産登記など、実印が必要な83の手続きは、従来通り押印が必要だ。全日本印章業協会は「実印や銀行印など重要な契約に使用する印章は今後も変わらず必要です」と呼び掛けている。
印章業界を盛り上げたいと考え、87文字の印鑑を作製した同社。担当者は「ここまで大きな反響は想定していなかった。これからも当社が誇る彫刻技術を知ってもらう発信をしていきたい」と話した。
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