「マルチ商法の優等生」アムウェイは、なぜこのタイミングで“お灸”を据えられたのか:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
日本アムウェイ合同会社に対して、消費者庁が勧誘などの一部業務を6カ月間停止する命令を出した。「昔から同じようなことをやっているのに、なぜ今なの?」と思われたかもしれないが、どういった背景があるのか。さまざまな憶測が飛び交っていて……。
不適切な勧誘行為
もちろん、ほとんどのディストリビューターは、日本アムウェイ側の指示通りにコロナとは一切結びつけないセールストークで販売をしていはずだ。しかし、中にはこんな感じの「ぶっちゃけトーク」でアトモスフィアを売る会員もいるのではないか。
「いや、本当のところはこの空気清浄機でコロナは除去できるんだけど、それを公に言っちゃうのは法律的にアウトなの。だから、本当はコロナの予防になるんだよね」
アムウェイのディストリビューターはそんなにモラルが低くないと不愉快になる人もいらっしゃるだろうが、冒頭の行政処分の対象になったようなことを、アムウェイは以前から会員に対して「絶対にやらないでください」と注意喚起をしている。しかし、残念ながら一部のディストリビューターはその呼びかけを無視して、不適切な勧誘などをしてしまう。
ディストリビューターはアムウェイから商品を仕入れているだけで、自分でビジネスをしている個人だから、アムウェイ側が一人ひとりのコンプライアンスを順守しているのかなどをチェックしているわけではないのだ。そんな自由さがアムウェイビジネスの強みでもある。
『コロナ禍で空気清浄機「アトモスフィア」が成長。コンパクトタイプの「アトモスフィアミニ」の発売で利用者層が拡大したことなどにより、「ハウスウェア」は同3.3%増の203億8100万円と好調に推移した』(日本流通産業新聞 5月22日)
コロナ禍で空気清浄機がバカ売れしたのはどのメーカーも同じだが、アムウェイの場合、ディストリビューターたちの「セールストーク」の影響もあったのではないか。
その中で、もし仮に筆者が心配していたような「新型コロナと結びつけた販売手法」があったとしても、消費者庁はお灸を据えにくい。アムウェイとしては「適切な予防手段ではない」と断言して、コロナと結びつけるなと注意喚起をしている。あくまでディストリビューターが自分の人間関係の中で言っているだけなので、立証が難しいのだ。
ただ、だからと言ってこのままお目こぼしというのも消費者庁としてもスッキリしない。そこで、以前から苦情相談が寄せられていて、比較的容易に行政処分に持ち込める「マルチの勧誘」のほうでお灸を据えたのではないか。警察でいうところの「別件逮捕」だ。
関連記事
- ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。 - 「大量閉店」に追い込まれたのに、なぜクリスピーは“復活”したのか
クリスピー・クリーム・ドーナツの売り上げが好調だ。売り上げが落ち込んで大量閉店に追い込まれたのに、なぜ復活できたのだろうか。取材したところ、2つの理由が浮かんできた。 - 「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。 - 登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。 - 東芝に売られた事業が軒並み好調な事情
2016年以降、東芝に売られた事業は、医療機器事業、白物家電事業、スマートメーター事業、メモリ事業、パソコン事業、テレビ事業と目白押しだ。そしていずれも見事に独り立ちして成長しているのだ。その意味を考えてみたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.