「マルチ商法の優等生」アムウェイは、なぜこのタイミングで“お灸”を据えられたのか:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
日本アムウェイ合同会社に対して、消費者庁が勧誘などの一部業務を6カ月間停止する命令を出した。「昔から同じようなことをやっているのに、なぜ今なの?」と思われたかもしれないが、どういった背景があるのか。さまざまな憶測が飛び交っていて……。
とにかくモノはすごくいいから
今は昔と違ってアプローチがSNSやアプリなので、しっかりとファーストコンタクトの記録が残る。個人が密室で行う「コロナ商法」よりも、はるかに処分しやすい。
ここでガツンとお灸を据えて、ルールを守らない勧誘や販売をする一部の悪質なディストリビューターをもっとしっかり管理するように、という消費者庁からの「教育的指導」だったのではないか。
6カ月の一部業務停止は確かにビジネス的には痛手だが、旧統一教会のように存亡の危機ということにまではならない。
今回の件でいろいろ言われているが、アムウェイが世界的企業であることは間違いなく、そのマーケティング戦略や商品開発、そしてネットワークビジネスの教育制度など、他のマルチ商法企業とはレベルが違う。
米共和党との蜜月関係などの政治力は確かに無視できないが、それがなくとも一目置くべき企業であることには変わらない。「マルチ」ということで強いアレルギーを示す人も多いだろうが、実はビジネスモデルやセールストークは、一般のビジネスパーソンにとっても参考になることが多いのだ。
それを端的に表現している、ディストリビューターの皆さんが会員勧誘や商品の販売のときにしつこく繰り返すあのキラーワードで本稿のまとめとしたい。
「マルチとかいろいろ言っている人もいるけれど、合法のビジネスだし、とにかくモノはすごくいいから」
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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