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メタバースで物件を探す!? 不動産大手LIFULLは、なぜ先進技術の活用に力を入れるのか「5年後の未来」を見すえた取り組みも(2/3 ページ)

近年注目されるメタバース。各業界でどう事業に取り入れていくかの試行錯誤が行われている。LIFULLは、実際の街を再現したメタバース空間内で物件探しができる「空飛ぶホームズくん」のベータ版をリリース。開発の背景や、それを通して実現したい世界について聞いた。

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先進技術を活用した住まい探しのあり方を模索

 同アプリを手がけた同社の「リサーチ&デザイングループ」(R&D)は、研究開発に特化した部門だ。先進的な技術を活用して住まい探しをより良い体験にしていくためのプロジェクトを手がけており、VRなどの技術にも早い時期から注目してきたという。

 「私たちは、5年後、10年後の未来がどういった世界になっているのか、そこでどんなサービスが提供されているべきかを想定し、そこに向かってプロジェクトを進めています。VRやスマートグラスが一般的になり、今のスマホレベルで使われるようになったときには、3Dコンテンツの体験が一般的になると予測しています。そのときに、住まい探しがどうあるべきかの一つの形として、空飛ぶホームズくんを制作しました」(上野氏)

 19年からヘッドマウントディスプレイを使ったVRサービスの開発を進めてきたものの、コロナ禍の影響などもあり、スマホアプリにシフト。20年から展示会などでプロトタイプ版を公開しながらブラッシュアップを進めてきた。

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20年に大阪で開催された「不動産テックEXPO」ではプロトタイプが披露された

 物件情報の提供が同社のメイン業務のひとつではあるものの、実際に暮らしていくとなると、物件そのもののスペックや住みやすさだけでなく、「そこがどんな街なのか」も重要な要素となる。VRを活用することで、街について知る体験も含めて提供していくことが目的だという。

 メタバースでの物件探しが可能性を持つもうひとつの側面が、住む場所の多様化だ。この数年、リモートワークの普及によって住む場所にとらわれずに働ける環境が整いつつある。実際、同社が9月に公開した「住みたい街ランキング」の23年版中間発表では、大宮や本厚木、八王子といった郊外の地名が上位に挙がっている。

 郊外で物件を探す場合、実際に足を運んで内見する時間が確保できないケースも少なくないだろう。空飛ぶホームズくんは、そんな遠隔地からの物件探しの用途も意識して作られているそうだ。先述の通り、現状ではアプリ内から直接問い合わせを行えないため、もし気に入った物件があった場合はWebサイトで同じ物件を検索して問い合わせを行う必要があるなど機能面で発展途上の部分が多いものの、いずれはリアルな内見の代わりを果たすものにしていきたいという。

「ウェルビーイング」を切り口に多彩な取り組みを実施

 「住む場所の多様化」にもつながる取り組みとして、R&Dでは、このほかにもさまざまなユニークなサービスを展開している。例えば、価値観診断コンテンツの「VALUES MAP」は、自身が持つ価値観について、簡単な質問に答えることで、「スイスイ決断志向」「ガッチリ安全志向」など10種類に分類。診断には現在の居住地や住み心地を入力するパートもあり、結果画面では自分と同じ診断結果の人が多く住んでいる地域をマップで見ることができる。

 また、「LIFE WILL」は、自分のTwitterアカウントを連携することで、最大200件のツイートを構文解析して感情分析を実施。あらかじめ設定された12の感情の中から、最も強い「ユーザーの感情」と、最も弱い「ユーザーに足りていない感情」が選定される。また、同様の手法で、その街について書かれている最大100件のブログ記事をもとに感情分析を行った「街の感情」も選定。「足りていない感情」が多いと判断された場所や物件が「今の自分の心に足りない感情に出会える場所」レコメンドされるものだ。

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「VALUES MAP」は診断コンテンツ形式で自分の価値観を測ることができる

 これらのコンテンツを展開する狙いは何なのか。それについて山崎氏は「スペック以外の要素を不動産探しに活用することで、よりウェルビーイングに暮らせる住まいに出会ってほしい」と回答する。

 「不動産の情報を探すときは、駅から近い、近隣施設が充実しているといったスペック的な部分を手がかりにすることが多いと思います。もちろんそれも大切ですが、仮に駅から離れていても、自分にとって心地いい場所に住む方がお客さまにとってよりよい効果――例えばヒトやコトとの新しい出会いや、新たな価値発見といった機会創出につながることもあります。それが“ウェルビーイングに暮らす”ということだとわれわれは考えています。その手がかりになるものとして、自分の価値観や感情を知るためのコンテンツを作っています」

 コロナ禍以降、働き方が大きく変わると同時に、暮らす場所への価値観も変化し、「ウェルビーイング(肉体的、精神的、社会的に満たされた状態にあること)に生きる」ことが注目されている。

 そしてライフルでは、個人が抱える課題やその先にある世の中の課題を事業を通して解決していくことを企業のミッションとして掲げている。そんな同社にとって、時代のニーズでもあるウェルビーイングに着目し、AIによるデータ活用などを駆使しながら、よりよい暮らし方、働き方を実現したいという顧客ニーズに応えることは、重要な取り組みのひとつなのだろう。

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