社長が360度評価をやってみたら――評価が散々!? 社員からサジを投げられていた企業が、それでも変われた理由:事例で見る、経営層と現場ギャップの埋め方(1/3 ページ)
組織の課題が浮き彫りになったとき、経営者の多くは現場の社員たちに「変わること」を求めるのではないだろうか。社長自らが率先して課題に向き合い、それを管理職や現場の社員たちに波及していった好例が、シーベースの取り組みだ。代表取締役の深井幹雄氏をはじめとする4名に、自社変革のプロセスについて聞いた。
組織の課題が浮き彫りになったとき、経営者の多くは現場の社員たちに「変わること」を求めるのではないだろうか。自らがその問題を直視して、己を変えることができるケースは珍しいが、社長が率先して課題に向き合い、それが管理職や現場の社員たちに波及していった好例が、シーベースの取り組みだ。
360度評価のクラウドサービス「スマレビfor360°」や、組織診断システムの「スマレビfor組織診断」を提供する同社で代表取締役を務める深井幹雄氏は、これらのツールを使って360度評価や組織診断を自社で実施。その結果は散々なものだったというが……同社はいかにして「社員に諦められていた」組織を立て直したのか?
深井氏および、取締役の谷江博昭氏、執行役員CHROの吉田洋介氏、コンサルタントの立場で同社に伴走する南山大学人文学部の中村和彦教授に、その変革のプロセスについて聞いた。
経営陣と現場の認識にギャップ
今年で創業22年のシ―ベースは、創業当初、SIerとして顧客の要望に応じてカスタマイズ開発を行う事業がメインだったこともあり、「よくいえば真面目、悪くいえば受け身」(深井氏)な企業文化が長く根付いていたという。
2017年に深井氏が代表取締役に着任してからは、「スマレビ」シリーズのプロダクトに磨きをかけ、顧客の「組織としての課題」を解決していく事業に注力する方向へ舵を切ることに。顧客が抱える課題は何か、それを解決するためにはどのような支援が必要か――それをサービスとして提供していくためには、業務に取り組む「悪くいえば受け身」な姿勢を180度転換するような組織改革が求められたが、経営陣と現場の認識にはギャップがあったと、深井氏は当時を振り返る。
「現場にも変わろうという意識はあるのですが、経営陣の意図をくみ取って実情に合わせて変わっていくという抜本的な改革にはなかなか至れず、現状の進め方では今以上の変化は難しいと感じていました」(深井氏)
そのような状況の中、コロナ禍に突入した20年から、同社の勤務形態はフルリモートに移行。業務連絡が文字ベースになったことで、口頭で伝えれば30秒で済む話を1日かけてやりとりしたり、Web会議でも多くの社員が画面オフのまま参加したりと、組織改革どころかノーマルなコミュニケーションさえままならない状況に陥っていったという。
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