社長が360度評価をやってみたら――評価が散々!? 社員からサジを投げられていた企業が、それでも変われた理由:事例で見る、経営層と現場ギャップの埋め方(2/3 ページ)
組織の課題が浮き彫りになったとき、経営者の多くは現場の社員たちに「変わること」を求めるのではないだろうか。社長自らが率先して課題に向き合い、それを管理職や現場の社員たちに波及していった好例が、シーベースの取り組みだ。代表取締役の深井幹雄氏をはじめとする4名に、自社変革のプロセスについて聞いた。
360度評価と組織診断は散々な結果に
こういった一連の問題がはっきりと可視化されたのは、21年に社長自ら実施した「スマレビfor360°」を使った360度評価。その結果は散々なものだったという。
「360度評価では、他の社員からの評価に基づいて、自分の強みと改善点が項目別に出るのですが、私に対する社員の評価は、『傾聴』『意思表現』『同僚理解』などに課題があるという結果になりました。経営者の立場として、現場をきちんと把握した上で指示を出しているつもりだったのですが、社員からすると、もっと現場を理解してほしい、傾聴してほしいという意識が想像以上に強かったことに初めて気が付いた瞬間でした」(深井氏)
同時期に、組織としての課題を把握するための「スマレビfor組織診断」も実施。その結果、多くの項目で「低い」を示す「3」未満が目立つという結果になった。一方で、「4」以上の評価の多い部門もあったが、これも実は表面的な評価でしかなかった。
「現場にヒアリングしたところ、社員は『この組織はどうせ変わらない』と諦めてしまっていて組織診断自体に関心がない、その上での結果だということが判明しました。心情的には評価『2』に近い状況であるが、とりあえず無難な『4』をつけたというのが実態です」(深井氏)
まずはリーダー層にアプローチ
状況改善のために、どこから着手すべきかを経営陣で検討した結果、まずは「リーダー層」へのアプローチを実施することになった。同社の組織構造は少々特徴的で、一般的な部長や課長にあたる役職が設けられていない。現場をまとめるリーダー層が、社長である深井氏の直下にあたる役職となるという。
リーダー層へのアプローチから開始したのには、理由がある。吉田氏はそれについてこう語る。
「改善を始める以前は、実態として深井社長をトップとする文鎮型組織の側面が強く出ていましたが、業務範囲の広さなどを考えると、その状態を維持するのは限界だと感じていました。これを変えるテコとなってくれるのは、経営層の意向をくみ取りながら、プレイヤー側の気持ちも理解できるリーダー層ではないかと考えました」
まず行われたのは、リーダー層に対するインタビュー。そこから見えてきたのは、業務偏重で余白のないコミュニケーションや、深井氏のトップダウン体制で組織改革は進められているものの、現状に変化がないことに対する疲弊感、業務の個業化といった問題だった。
そこで、リーダー層が会社への不満などを抱え込まずに外に出せる場を作ること、リーダー同士の横のつながりを作り、問題意識を共有することを目指してグループコーチングを実施。十数人のリーダー層を3〜4人ずつのチームに分け、週1回、1時間のコーチングを通して自身の業務を振り返り、実施したことやそこから得た結果を部門横断で共有した。
その結果、他部署でも同じ課題を持っていることが分かったり、他部署の業務内容を知ることが会社全体の動きを理解することにつながったりといった成果が見え始めた。同時に、不満や思っていることを吐き出せる場ができたことで、ネガティブな感情が前向きな問題意識に変化していき、「自分たちが動けば組織は変えられる」という能動的な意識が高まっていったという。
その後、リーダー層から経営陣との対話の機会を求める声が挙がり、深井氏とコミュニケーションをする機会を設けたところ、新しい企画や会社として今後取り組みたいことなどが積極的に挙がっていった。
「組織改革に取り組んでいても、社員に『どうせ変わらない』と思われていては意味がありません。リーダー層へのアプローチと並行し、経営陣も変わろうという意識を新たにすることで、現場の意見を上がしっかり受け取って実行し、変化が見える改革にすることなどに取り組みました」(吉田氏)
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