「田園都市線」は多くの人が嫌っているのに、なぜ“ブランド力”を手にできたのか:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
「通勤地獄。なぜあんなところに住むのか」――。SNS上で「東急田園都市線」が批判されている。街は整備されていて商業施設もたくさんあるのに、なぜこの沿線をディするのか。その背景に迫ったところ……。
ブランド力をキープできるのか
もちろん、あくまで沿線なので「つくられた感」のない駅や街もある。例えば、三軒茶屋には三角地帯という昭和の香りが漂う飲み屋街があるし、溝の口の駅周辺には戦後の闇市の風情を残す渋い立ち飲み屋もある。田園都市線とひとくちに言っても多種多様なのだ。
田園都市線沿線の新興住宅地は、日本中に乱立した「ニュータウン」の中では成功モデルとされているが、決してその評価にあぐらをかけるような状態でもない。
渋谷と横浜という巨大都市同士をつなぐ東急東横線は人々が行き交うことで沿線のにぎわいが維持できるが、東急田園都市線の場合、渋谷から中央林間というベッドタウンを結ぶ一方通行だ。二子玉川やたまプラーザなどのブランドタウンはまだいいとして、他の駅は、人口減少と高齢化によって、ゴーストタウン化が進んでいくという見方をする専門家も少なくない。
果たして、「憎まれっ子世にはばかる」で、これからも田園都市線沿線はブランド力をキープできるのか。それとも「なんかあいつら鼻につくよね」という人たちがスカッとするほどの見事な衰退劇を見せていくのか。注目したい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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