ボートを製造しているヤマハが、「カプセルホテル」をつくれたワケ:水曜日に「へえ」な話(4/4 ページ)
ヤマハ発動機のニュースリリースを見ていたら、ちょっと気になるネタがあった。同社のFRP技術を使って、カプセルホテルのベッドの部分を開発したのだ。なぜ気になったのかというと……。
新しい市場に飛び込むのか
さて、プールの紹介が長くなってしまったが、カプセルホテルの話に戻す。FRPの素材を使ってボートが売れている、プールもシェアが高いとなれば、「アレもFRPにしよ」「コレもFRPにするぜ」といった具合に、世の中に眠っている“お宝”を探したくなるものだが、ヤマハは行動に移さなかった。
自社製品のためにFRPの技術を使う――。門外不出のような感じで、新たな取り組みに消極的だったのだ。しかし、である。カプセルユニットをつくったということは、この市場に打って出ることを考えているのかもしれない。ちょっと調べたところ、カプセルホテル市場は伸びていて、2027年までに3億8003万米ドルに達するレポートもあるほど(Report Ocean調べ)。
「21年から27年の間に、市場は8.2%以上伸びると予測している」(Report Ocean)ので、このような数字を目の前にすると、かつてボートの底をひっくり返してプールをつくったように、市場をひっくり返すようなことを企んでいるのかもしれない。
カプセルユニットの開発に携わった青沼克弥さんに聞いたところ、次のような答えが返ってきた。「FRPを使って新たな市場に打って出るといったことは、いまのところ考えていません。社会課題を解決するために取り組んでいまして、第一弾として、歩道橋の床版にFRPの技術を採用していただきました。今回のカプセルユニットはその流れの一環として取り組んだものでして、これからもFRPを使って社会課題を解決することができればなあと思っています」と。
FRPの技術を携えて、新しい市場というプールに飛び込むのか。それともカプセルにフタをするような感じで、門外不出のスタンスを貫くのか。考えれば考えるほど、プールにハマって……ではなく、ループにハマってしまう。ヤマハがどちらの道を選ぶのか、それが分かるのはもうしばらく先になりそうだ。
関連記事
- 「マルチ商法の優等生」アムウェイは、なぜこのタイミングで“お灸”を据えられたのか
日本アムウェイ合同会社に対して、消費者庁が勧誘などの一部業務を6カ月間停止する命令を出した。「昔から同じようなことをやっているのに、なぜ今なの?」と思われたかもしれないが、どういった背景があるのか。さまざまな憶測が飛び交っていて……。 - ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。 - なぜ山善の「焼肉グリル」は25万台も売れたのか 開発のヒントが面白い
山善の「焼肉グリルシリーズ」が売れている。第1弾が登場したのは、2020年7月のこと。その後、第2弾、第3弾を投入し、22年7月現在で累計25万台を突破した。なぜホットプレートがこれほどウケているのだろうか。人気の秘密を取材したところ……。 - 『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』――最も高い家に住んでいるのは? 査定してみた
国民的アニメの主人公は、どんな家に住んでいるのでしょうか? 『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』の自宅を査定したところ……。 - 登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.