2015年7月27日以前の記事
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スマホと衛星の直接通信に期待 マスク氏の「Starlink」、日本でも年内サービス開始へ房野麻子の「モバイルチェック」(2/3 ページ)

昨今、携帯電話業界では衛星通信に対する注目が非常に高まっている。次世代通信規格「5G」の次にあたる「Beyond 5G」や「6G」では、地上だけでなく、空や海、宇宙といった場所でも通信できるようにする「超カバレッジ」を目指している。その研究が進んでいるという背景もあるが、iPhone14シリーズが衛星経由の緊急SOS機能を導入したことも大きかった。

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 ただ、低軌道だと衛星から見渡せる地域は狭くなるため、多数の衛星を打ち上げて協調させる必要がある。スペースXはロケット「Falcon 9」ですでに3000機以上、2022年だけもすでに1400機以上の衛星を打ち上げている。これは衛星打ち上げのコストが劇的に下がってきたことで可能になった。技術とコストダウンによって「長年のコンセプトがついに実現した」(松田氏)


Starlinkの低軌道衛星は数多く打ち上げられており、サービスもすでに提供されていることが強みだ

 法人・自治体向けサービス「Starlink Business」を実際に利用する際は、Starlinkの端末にWi-Fiや有線LANでスマートフォンやパソコンなどを接続すると、地上局経由でインターネットにつながる。たくさんの衛星が次から次へとやってくるので通信が途切れない。地上ではユーザーが動いても基地局が切り替わることでつながり続けるが、Starlinkの場合は逆に基地局の方が動くようなイメージだ。

KDDIとスペースXが共同で技術検討を推進

 日本でのサービス導入に向けては、スペースXとKDDIが共同で技術検討を推進してきた。KDDIの前身の1つにKDD(国際電信電話)があり、衛星通信のノウハウを持っているKDDIが、いち早く低軌道衛星通信に取り組むのは自然なことと言えるだろう。KDDIは山口市にあるKDDI山口衛星通信所をはじめ、Starlinkの地上局を複数構築して、Starlinkを全国で利用できるように体制を整えている。


Starlink用のアンテナは写真には写っていないが山口のKDDI山口衛星通信所にStarlinkの地上局を構築

 Starlink Businessの提供エリアは、11月上旬現在で南西諸島など一部を除く全国。ビジネス利用に応えるハイパフォーマンス仕様で、個人向けよりさらに高速、安定、高耐久性だという。アンテナのサイズは個人向けよりやや大きく、高利得、広視野角のアンテナ。IP56に準拠する防水防塵性能で、強い噴流水にも耐えられる。通信速度は最大受信時350Mbps(メガビット毎秒)、送信時40Mbpsで、動画も安定して見られる速度だ。しかも、Starlink Businessは帯域が優先的に割り当てられる仕組みが用意されている。


Starlink Businessで提供されるアンテナ(左)とルーター

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