「ジャニーズ騒動」から学ぶ、中堅・若手が逃げる組織の問題:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
「ジャニーズ帝国」に激震が走っている。滝沢秀明副社長が退社して、人気グループ「King & Prince」のメンバーが退所して。なぜ、次々に事務所を離れていくのだろうか。「ウチの会社みたいだな」といった原因があって……。
現状維持に陥ってしまうワケ
かつてジャニーズを「手本」として仰ぎ見ていた韓国のエンタメ企業が、アイドルに英語を覚えさせて続々と海外進出を仕掛けている。BTSがグラミー賞ノミネートなど華々しい成果を残しているのと対照的に、ジャニーズは「内向き志向」だと言われている。実際、Travis Japanがジャニーズ初の全世界デビューを果たしたが、あくまで活動の軸足は日本である。
ネットの活用にも積極的ではなく、所属アイドルがYouTubeチャンネルを開設したのは2018年で、他のタレントと比べるとかなり遅い。ちなみにこれも、10年に「滝CHANnel」を始めて、いち早くYouTubeの可能性に目をつけていた滝沢氏が、副社長になって進めた「改革」のひとつとされている。
では、なぜこのような現状維持に陥ってしまうのかというと、「現状維持でも十分過ぎるほど稼げるから」ではないか。
先ほども申し上げたように、ジャニーズ所属タレントは、NHKから民放まであらゆるテレビ番組に出演していて見ない日はない。競合するような男性アイドルグループを抱えるライバル事務所も存在しないので、これまで通りに人気を独占できるので、コンサート、グッズ販売、ファンクラブで十分に稼ぐことができる。
つまり、国内で莫大なカネを生む人気者たちに、わざわざ海外進出などの「バクチ」をやらせる必要がないのだ。YouTubeも同様で、韓国アイドルたちのチャンネルのように、ネット上で彼らの素顔が見られて人気者になってしまうと、「テレビに出ている」というジャニーズならではの強みがなくなってしまうのだ。
そこに加えて、ジャニーズ事務所が現状維持に流れてしまっているのは、多くの日本企業に共通している形態も大きい。それは「同族経営」だ。
ジャニーズ事務所の最終意思決定者は、藤島ジュリー景子氏だ。同氏はジャニー喜多川前社長の姪にあたり、ジャニー氏から全権を引き継いだ。つまり、同社はいわゆる「同族企業」だ。
国税庁の会社標本調査(2020年度)によると、日本で活動中の会社(単体法人)の96.3%は同族企業で、268万6862社に上る。特に資本金1億円以下の企業では9割を超え、1億円超の企業でも6割近くが同族だ。
資本金1000万円で、従業員が170人(公式Webサイト)の同族経営のジャニーズ事務所は、典型的な日本企業と言えるのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。
「田園都市線」は多くの人が嫌っているのに、なぜ“ブランド力”を手にできたのか
「通勤地獄。なぜあんなところに住むのか」――。SNS上で「東急田園都市線」が批判されている。街は整備されていて商業施設もたくさんあるのに、なぜこの沿線をディするのか。その背景に迫ったところ……。
「マルチ商法の優等生」アムウェイは、なぜこのタイミングで“お灸”を据えられたのか
日本アムウェイ合同会社に対して、消費者庁が勧誘などの一部業務を6カ月間停止する命令を出した。「昔から同じようなことをやっているのに、なぜ今なの?」と思われたかもしれないが、どういった背景があるのか。さまざまな憶測が飛び交っていて……。
登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。
「日本のアニメ」は家電や邦画と同じ道を歩んでしまうのか
技術や品質が「下」だとみくびっていた相手に、いつの間にか追い抜かれてしまう。そんな悪夢がやって来るのだろうか。白物家電や邦画が追い抜かれたように、「日本のアニメ産業」も負ける日がやって来て……。
