なぜ若者に「純喫茶」の定番メニューが人気なの? 単なるレトロではない“昭和の喫茶”ブームの背景:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/6 ページ)
昭和の喫茶をコンセプトにしたお店が若者に支持されている。大手チェーンだけでなく個性的なお店も続々登場している。単なるレトロではない人気の背景は?
大阪「千成屋珈琲」
さて、大阪のミックスジュース発祥の店として著名な「千成屋珈琲」は一度閉店しながらも、復活を果たし、関東にも進出して、人気商業施設「ラゾーナ川崎プラザ」(神奈川県川崎市)にも店舗を構えている。ラゾーナの店舗に行ってみると、昔ながらのミックスジュースやプリン、コーヒーゼリー、クリームソーダを売っている。その一方で、台湾カステラのような、令和になって導入した新しい商品もメニューに加えて現代性を持たせているのがミソだ。
通天閣のお膝元、新世界の「ジャンジャン横丁」に店舗を構えてきた千成屋珈琲は、1948年(昭和23年)に創業した果物店をルーツとする。熟しすぎて売り物にならない果物を捨てるのがもったいないという、現代流に言い換えれば食品ロスを解消する視点で、創業者の恒川一郎氏が開発した。甘味が最大になる完熟の果物をミキサーにかけたジュースは非常に好評で、店の看板メニューとなった。
60年に喫茶店に業態を転換。今ではほとんど使う人がいなくなった、アイスコーヒーを「冷コー(レイコー)」と呼ぶ言い方は、千成屋珈琲から広まったとする説もある。それほど、大阪の喫茶文化に大きく貢献した名店だったが、3代目の豊子氏が体調を崩し、2016年にいったん閉店した。
しかし、閉店を惜しむ大阪の有志が創業家を説得して17年に復活。現在は、LIFEstyle(大阪市)という外食企業の経営となっている。
新世界の本店はコロナ禍で休業していたが、6月11日に営業再開。ミックスジュースの他、ミルクセーキやミルクコーヒーを、エモい牛乳瓶で提供するバージョンアップを行った。
食事メニューでは、ハンバーグ、オムライス、海老フライ、ナポリタンをワンプレートに盛り付けた「千成屋洋食プレート〜大人のお子様ランチ〜」などの懐かしい洋食が楽しめるようにしている。
なお、ミックスジュースは焼鳥居酒屋チェーン首位の鳥貴族のメニューとしても、オリジナルクラフトジュースとして提供されている。東大阪市発祥の鳥貴族では、大阪の食文化に敬意を表してミックスジュースは定番となっている。果実のシロップをミルクで割った、甘い口当たりが特徴で、女性に人気がある。
ミックスジュースで、名物の貴族焼を頬張る。これも通な鳥貴族の楽しみ方の1つとして知られる。
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