ヤフーの「どこでも居住可能」制度はどうなった? 東京圏からの“脱出”を選択した社員の転居先:人事担当者に聞く(3/4 ページ)
ヤフーは従業員が日本国内ならどこに居住しても良いという制度を打ち出した。従業員にはどのような変化が出たのか。人事担当の責任者に話を聞いた。
働く社員のパフォーマンスを最大化することが目的
この制度のメリットはどこにあるのでしょうか。
(1):「ただ働く」から「どう働けるか」
どこでも居住制度を開始した4月1日以降、すでに130人以上の社員が飛行機や新幹線での通勤圏へ転居したそうです。また、東京オフィス所属の社員のうち約400人が1都3県以外の地域へ転居しています。前述の東京都からの転出状況と比べるとかなり多い印象があります。
飛行機や新幹線での通勤圏に転居した社員の転居先で多かったのは、九州地方の48%、次いで、北海道の31%、沖縄県の10%と、遠方への転居が多かったというのが特徴です。
ヤフーショッピングの福岡営業所に移住した社員、越後湯沢の実家に移住した人材開発部の社員、セカンドキャリアを見越して西表島に移住したシステム統括部の社員、東京・長崎の二拠点居住を始めた企画系の社員、さらに定住しないスタイルを選んだアプリ開発の社員など、部署も年齢も立場もバラバラです。幅広い社員に支持されていることが分かります。
(2):優秀な人材を広い地域から発掘できるようになった
どこでも居住制度を発表・導入して以降、中途採用の応募者数が21年比で6割増になったというのは注目に値します。
中でも「1都3県以外の地方都市からの採用応募者数が月ごとに増加している」点は見逃せません。4月は応募総数の28%、5月は31%、6月は35%が1都3県以外の地域からとなっています。これまではヤフーで働くことが難しかった地域から応募する人がでてきたのです。
この制度は社員にもメリットがありますが、会社にとっても優秀な人材を日本全国から採用できるという点で大きなメリットがでてきそうです。
(3):無駄なコストと時間を削減できる
社員があまりオフィスに出勤しなくてもよいとなれば、単純にオフィスの賃貸面積は狭くて済みます。21年にはオフィスを4割程度縮小するなどして早々に不動産コストを減少させています。また、出社が減るので社員の交通費はトータルで減ることになるでしょう。飛行機や新幹線で出社する人もいるので、正確にはまだ分からない部分もありますが、交通費は下がるだろうと見ています。
さらにメリットとして挙げられるのは「オフィス内での移動時間の削減」と「通勤時間の削減」です。
「オフィス中心だった頃には、会議でオフィスの中を移動するだけの時間が相当かかっていました。エレベーターで上がったり下がったり。その間、仕事はできないわけです。無駄な時間がなくなったことは大きいですね」(岸本氏)
また、通勤時間という、従来は当然のようにかかっていた時間がどこでも居住によってなくなりました。生産性を上げるためには、まずは無駄な時間をなくすことが先決です。これまで会社が当然のように抱えていた無駄なコストを一気に取り払うことを可能にしたという意味で、画期的な取り組みだと私は感じました。
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