「芸名禁止」はNGで「恋愛禁止」はOK? 愛内里菜さん裁判から考える、契約条項に潜むリスク:その契約、大丈夫? 弁護士が解説(3/4 ページ)
歌手の愛内里菜さんと専属契約を結んでいた事務所が「芸名使用」を巡って起こしていた裁判が話題になった。芸名以外にも「恋愛禁止」などの条項を盛り込んだ契約は、時折議論を呼ぶ。果たして、契約はどこまで許されるのか。弁護士が解説する。
さて、今回の愛内里菜さんを巡る判決の通り、契約自由の原則があるものの、公序良俗に反するなど、社会的妥当性を持たない条項(どちらか一方が過度に不利な条項)については、法令上無効となることがある。
これは、何もマネジメント契約に限定された話ではなく、全ての契約にいえることである。そのため、契約にかかわるビジネスパーソンであれば、どんな内容の契約が無効となってしまうのかは押さえておきたいポイントである。ここからは、時折ニュースで話題に上がる免責条項や恋愛禁止条項を確認していこう。
「免責条項」に潜むリスク
免責条項とは、事故などが発生した際に主催者側などの責任を免責する旨の(ないしそのように読める)条項である。
例えば、スポーツクラブの規約において、生徒がけがなどをしたとしても、運営側が「一切責任を負わない」とした規定を目にしたことのある人は多いだろう。このような条項や規約のある書面にサインをした覚えのある読者もいると思うが、裁判になった場合には、無効になる可能性が高い。
なぜなら、こうした条項は、人の生命や身体という極めて重大な対象に関して、「一切の責任追及」をあらかじめ放棄させる内容である。そのため、冒頭で紹介した公序良俗に反する規定として、民法第90条や消費者契約法第8条第1項の規定に抵触する可能性が高いのである。
このような規定を設けている事業者がいれば、ぜひ規定を確認の上、必要に応じて修正することを強く推奨したい。
恋愛禁止条項の有効性について
次に恋愛禁止条項について見てみよう。
実のところ、アイドル・タレントなどについて、契約期間中の恋愛を禁止する恋愛禁止条項については、判例上「無効」とはされていない(東京地判H 27.9.18、東京地判平28.1.18等)。
こうした条項は、多数の異性ファンがいる、交際相手がいないことを前提としたアイドルのイメージを維持したいという事務所側の要請に基づくものと考えられる。そのため、恋愛が発覚した場合に、当該アイドルの人気低下につながる可能性がある。このことから、裁判所は事務所側の要請が不合理ではないと考えているようである。
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