低迷していた「ミスド」なぜ復活? 背景に、第三次ドーナツブームと行列のできる人気店:長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/6 ページ)
低迷していた「ミスタードーナツ」の売り上げが回復基調にある。ドーナツ市場が縮小する中で、いかにして復活できたのか。かつて経験したコンビニとの“死闘”も振り返る。
ドーナツ専門店チェーン「ミスタードーナツ」の業績が回復し、再び成長軌道に乗っている。
運営会社ダスキンの2023年3月期第2四半期連結決算(22年4〜9月)によれば、ミスタードーナツが大半を占めるフードグループの売上高は214億円で、前年同期の199億円から7.2%増となった。また、営業利益の24億円は、前年同期の18億円から38.8%増と大幅に伸びている。
ミスタードーナツはコロナ前から不振が伝えられ、実際に売り上げは徐々に落ちていた。その不振ぶりがいかに深刻だったか。直近10年(13〜21年)のフードグループ通期売り上げの推移は、次の通りだ(決算月は3月)。
13年:488億円→14年:470億円→15年:483億円→16年:440億円→17年:402億円→18年:376億円→19年:354億円→20年:363億円→21年:366億円→22年:438億円
さらにさかのぼれば、フードグループの売り上げが最大だったのは、公開された資料上では、ダスキンが上場して初めての決算を発表した07年で、553億円の規模があった。そこから19年まで、基本的に売り上げが減り続けていた。
最大で200億円も売り上げが落ち、3分の2の規模にシュリンクしていた。そう考えると、コロナの中で3年連続で売り上げを伸ばしてきたのは奇跡的なことだ。
続いて、直近10年(13〜21年)におけるフードグループ通期の営業利益の推移を見てみよう。△は損失を表す。
13年:11億円→14年:△4億円→15年:△2億円→16年:△15億円→17年:△7億円→18年:4億円→19年:3億円→20年:7億円→21年:4億円→22年:36億円
営業赤字を計上したのは、14〜17年の4年連続。18年には不採算店を整理してなんとか黒字に転換したが、それ以降もようやく1桁の営業利益と、利益率は極めて低かった。しかし、22年には過去10年で最大の36億円の営業利益を計上。今期もこれまでのところ、前期より大幅に利益を伸ばしているのは見事だ。
むしろコロナ禍に入ってきた20年から衰退に歯止めがかかり、好転している。ミスタードーナツはテークアウトが従来から多く、売り上げの6〜7割を占めるといわれてきた。店内飲食が避けられるコロナ禍においては、さらにテークアウトの利用率が高まり、デリバリーも合わせて、幾多ある飲食店からミスタードーナツが選ばれた面がある。
店舗数は一貫して減り続けてきたが、22年には9年ぶりに増加に転じている。ちなみに12年の店舗数は1377だった。
ミスタードーナツの店舗数の推移は次の通りだ。13〜20年は稼働店舗数(単純平均)、21〜22は営業拠点数をそれぞれ指す。
13年:1378→14年:1349→15年:1316→16年:1269→17年:1195→18年:1121→19年:1046→20年:985→21年:961→22年:979
コロナ禍の間、ずっと好調を維持した外食チェーンは、「マクドナルド」「モスバーガー」「KFC」など、いずれも店内飲食よりテークアウトの比率が高かった業態ばかりだ。ミスタードーナツにも同じ法則が当てはまった。
もう1つ、実は昨年あたりから、第三世代と呼ばれる新しいドーナツの人気店が東京都内をはじめとして、目立つようになってきた。「アイムドーナツ」「ラシーヌ」などといった新鋭が街中で行列をつくっている。若者の間で、新たなドーナツブームが起こっているのだ。
そうした第三次のドーナツブームが、ミスタードーナツ復活の背景にあると考えられる。一時期、消滅しかかった「クリスピー・クリーム・ドーナツ」もじわじわと復活してきている。
ミスタードーナツ復活の理由と、ドーナツブームについてまとめた。
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