ボンカレーが急に“世界一”をうたい始めた、たった1つの理由:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
大塚食品の「ボンカレー」がギネス世界記録に認定された。レトルトカレーブランドとして「世界最長寿」であることが認定されたわけだが、なぜこのタイミングで“世界一”をうたい始めたのか。背景にあるのは……。
ボンカレーで戦っていく
不動の人気を誇る「ボンカレーゴールド」を筆頭に、フライパン調理もできる「ボンカレークック」、キーマビーンズカレーの「ボンカレーベジ」、厳選素材と本格製法を用いた「Theボンカレー」など、17種類(ボンカレーブランドサイト)にも及ぶラインアップを充実させてはいるものの、ハウス食品の多種多様なブランド展開を前にすると、どうしても霞(かす)んで見えてしまうのだ。
かといって、今からハウス食品のような真似はできない。となると後に残されているのは、ボンカレーというレガシーをさらに研ぎ澄ませていく戦い方しかない。つまり、これまで以上に「ボンカレーはレトルトカレーの元祖」というイメージを訴求していくのである。
実際、ボンカレー誕生50周年を迎えた18年、大塚食品はさまざまな方面でこのレガシーをアピールした。まず、50周年にかけて「ボンカレー50」を発売、さらにエースコックのスーパーカップとコラボをして、「スーパーカップ1.5倍 ボンカレーゴールド中辛風 カレー」(うどんとラーメン)にも挑戦。また、同じく50周年を迎えたクボタの田植機ともコラボして、国産米を応援するキャンペーンも展開した。
さらに極め付きは、手塚治虫のマンガ『ブラック・ジャック』とコラボしたキャンペーンだ。実は主人公の天才外科医師ブラック・ジャックはボンカレーが大好物で、劇中で「ボンカレーはどうつくってもうまいのだ」という名言も残しているほどで、このエピソードが紹介された広告号外も渋谷駅前で配布された。
ただ、残念ながら、このようなあらゆる方向からのブランディングを続けてきたものの、絶対王者「カリー屋カレー」の牙城を崩すところまではいっていない。ハウス食品側も同じくキャンペーンやブランディングに力を入れているからだ。
例えば22年夏、「カリー屋カレー」などハウス食品のカレーはある国民的な人気者たちとコラボキャンペーンを行っている。大ヒットした映画『ONE PIECE FILM RED』だ。
ただでさえ人気のある「カリー屋カレー」のパッケージに、子どもから大人まで多くのファンがいるワンピースのキャラクターたちが描かれれば、さらにその強さが磐石になるというのは容易に想像できよう。また、22年はライバルである「ククレカレー」も50周年ということでキャンペーンを展開、パッケージにも「やさしい味わい50年」というロゴも入って、消費者の注目を集めた。
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