「冷蔵庫に紙を貼らないで」 岩手・北上市の“常識”を変えるプロジェクト:保育園をDXで(5/5 ページ)
岩手県北上市の「保育園DX」プロジェクト。連絡帳などをデジタル化したが、その効果は業務効率化にとどまらない。現場の意識改革や市の他部門への広がりにもつながっている。民間出身のDX推進リーダーは、子育て世代から“常識”を変えていくことが狙いだと話す。
子育て世代から“常識”を変える
北上市が目指すのは、「市民」「市」「職員」の三方良しのDXだ。保育園DXの事例を見ても、保育園の業務効率化にとどまらず、幅広い波及効果を生み出そうとしていることが分かる。そういった取り組みは全て、将来を見据えて“常識”を変えていくためだ。
「私は、今後のDXのカギは子育て世代の人たちだと考えています。共働きの大変さは、体験した人が多くない上の世代にはなかなか伝わりません。子育て中の親と子どもたちが“変化”に気付くことに価値があります」(大塚氏)
高齢者向けサービスなど、全てをデジタル化できるわけではない事業もある。子育て世代はデジタルへの対応が可能なケースが多く、そういった特定の世代向けのサービスでは、大量印刷を見直してオンライン対応に切り替えることが必要だという。大塚氏は「妊娠届提出のためのオンライン来所予約は、特に告知していないのに来所者の8割が利用しています。検索で見つけてくれるからです。そういったデータを示しながら、さまざまな部門でデジタル化を働きかけていきます」と意気込む。
23年度に向けて、新たなプロジェクトも進めている。通常、自治体では新年度の予算が決まった後に事業が動いていくが、大塚氏は現状把握やデータ収集など、予算決定前から取り組みに着手しているという。それも“常識”を変えるための一つの方法だ。
「予算を獲得しないとできないのも事実ですが、市民に対して『予算が取れないからやらない』とは言えません。仮に予算が通らなくても成果を出せるように、変えられるところから少しずつ、市民生活の大変なことや不便なことの解決に向けた複合的な取り組みを始めています」(大塚氏)
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