好調の「すし居酒屋」チェーン どんどん増える「や台ずし」「杉玉」は何がすごいのか?:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/6 ページ)
コロナ禍で居酒屋業態が大苦戦している一方で、すしが主力の「すし居酒屋」は好調だ。どのようなビジネスモデルで、どんな点が支持されているのか。
独特な「や台ずし」
「や台ずし」はヨシックスホールディングスの事業会社であるヨシックスフーズの主力業態。全国で約300店を展開している。
1号店は2000年、名古屋市内に出店。以降、独特な「田舎戦略」に到達し、地元店や他のチェーン店と競合せずに地域一番店を目指す戦略を貫いている。
具体的には、年間を通して一定以上の安定的な居酒屋需要が見込める地域(東海道、山陽、九州新幹線沿線に隣接する市町村)に出店。しかも、乗降客6000人以上の駅前、かつ従業員の雇用が可能な地域に、出店を絞り込んでいる。いわば、1.5等地や2等地にあたる郊外の駅前を選んでいるのだ。
また、「老舗理論」という、店づくりに関する戦略もユニークだ。や台ずしでは、チェーン店の強みである教育制度の充実や効率的なオペレーション、明朗会計を取り入れている。一方で、地元個人店や小型店の優位性である、すし職人の店舗内調理による手づくりへのこだわりや、現地雇用・現地調達によって地域に貢献する姿勢を持つ。
要は、30〜40坪程度の席が埋まりやすい中小型直営店を低コストで出店し、大型店と個人店の良いとこ取りを狙っている。
同社では、田舎戦略と老舗理論の効果として、戦略的に1.5等地や2等地に中小規模店を出店して、固定費たる家賃比率を7%台に抑制。家賃比率を抑制した分、仕入れなどにコストがかけられる。良い商材を使ってお値打ち感が高められるというわけだ。顧客満足度の高い料理を提供し集客することで、坪当たり単価を高めて効率的に利益を獲得できるとしている。
もともと、同社のルーツは飲食店向けの建築会社であり、現会長兼社長の吉岡昌成氏が85年に起業している。そのため、内外装、デザインが内製化でき、出店コストを抑制できるのも強みだ。
ヨシックスの調べでは、東海道、山陽、九州新幹線に隣接する市町村にある乗降客6000人以上の駅の数は2511あり、出店可能な店舗数は4638店。その全てにや台ずしを出店するとは限らないが、まだ300店程度ということからも、理論上、マーケットはがら空きということになる。
同社は22年3月期にも8店を新規出店したが、23年3月期には37店の大量出店を見込んでいる。
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