5ブランド擁する『アイマス』シリーズ マーケ担当者明かす長期コンテンツの「水平展開」:わかちこPに聞く(2/2 ページ)
『アイマス』がバンダイナムコを代表する人気コンテンツファンであり続ける秘訣は何か。複数ブランドで展開するメリットはどこにあるのか。『アイマス』プロジェクトを統括するバンダイナムコエンターテインメントの波多野公士ゼネラルマネージャーと、「わかちこP」という通称で知られる同マーケティング課の狭間和歌子マネージャーに聞いた。
25年にはシリーズ20周年
――2月の東京ドームのライブ「THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!!!!! 2023」では、5ブランド全ての楽曲が披露され、キャラクターを演じる100人以上の声優によるパフォーマンスが予定されています。5ブランドが集結する単独ライブは初の試みです。ブランドを横展開することの狙いはどこにあるのでしょうか。
波多野: 各ブランドでお客さまの世代が異なるので、ライブで新しいアイドルに出会えるところが一番だと思っています。例えばファンの年代が高めな『ミリオンライブ!』が好きな方に新しい『シャイニーカラーズ』を紹介したりとか、『シャイニーカラーズ』好きな方に『SideM』を紹介したりとか、そういった活動を意識してやっていきたいなとは思っています。
――『アイマス』ブランドの水平展開としては、2020年の15周年のタイミングで結成された5ブランド合同ユニット「THE IDOLM@STER FIVE STARS!!!!!(アイドルマスターファイブスターズ)」もあります。
狭間(わかちこP): 「FIVE STARS!!!!!」は20年7月の15周年のタイミングで、5ブランド合同の展開強化を打ち出すことで、『アイドルマスター』の新しい可能性を感じてもらいましょうという意図で、10周年時に結成したアイドルマスター、シンデレラガールズ、ミリオンライブ!の3ブランド合同ユニット「THE IDOLM@STER THREE STARS!!!(アイドルマスター スリースターズ)」を更新する形で始めました。
ただ、ちょうどコロナ禍のタイミングと重なってしまい、思うような展開ができなかったところもあります。こうしたところも含めて、東京ドームのライブをはじめ、力を入れていきたいと考えています。
――2年後の25年には、『アイマス』シリーズ20周年が待っています。東京ドームのライブは、そこへの翼を広げる大切な一歩にもなりそうですね。
波多野: まさにずっと20周年どうするっていう話をしていますね。
狭間(わかちこP): 20周年に向けては、ブランドごとの「プロデューサー」さんに、より満足していただくという、既存事業の拡充は当たり前に進めていくものとして、「FIVE STARS!!!!!」のようなブランド横断型展開や、『ヴイアライヴ』といった新規事業の上にプラスアルファーが乗っかってくると考えています。
『ヴイアライヴ』が6つ目のブランドに加わるかどうかも含めて、一緒に新しい可能性を感じてもらえる展開を組み立てていきたいですね。当社としても「プロデューサー」さんと向き合い、意見を聞く機会は大切にしていきたいと思っています。
もっと多くの「プロデューサー」さんに会いに行ける20周年にしていきたいなと思っています。
――20周年は6ブランド横断の「SIX STARS!!!!!!」になる可能性もあるということですね。一方で20周年に向けては、いかにして『アイマス』を全く知らない新規顧客に訴求していくかも課題だと思います。
狭間(わかちこP): 新規の方を取り込める一番のきっかけになるのがアニメだと思っています。23年4月からは『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』の放送が開始されます。23年10月からは『アイドルマスター ミリオンライブ!』の放送が始まります。
アニメというある意味、受動的なメディアを通じてお客さまにまずは観てもらうことで、大きなフックになると考えています。23年の展開は、まずはアニメですね。
――アニメを入り口にして、ゲームに入っていく動線もありますね。『アイマス』の音楽もサブスクの配信が始まり、気軽に聴けるようになりました。
狭間(わかちこP): 『ヴイアライヴ』の展開も含めて、動画配信を通じて新しいユーザーを獲得していきたいと考えています。公式の配信だけでなく、YouTuberやVチューバーの方々も、ゲーム配信の題材として『アイマス』シリーズのゲームを選んでくださっています。それを通じて新たな「プロデューサー」さんの数が増えているのも実績になっています。
――動画配信者も「プロデューサー」だと思いますが、ファンの活動がさらなるファン獲得につながる好循環が起こっていると言えそうです。
狭間(わかちこP): いろんな実況主さんがゲームをプレイしてくださっています。それを実況主さんのファンの方々が見て、「このゲームちょっとやってみようかな」というような形で、多くの新しい「プロデューサー」さんの獲得につながっています。アニメと動画配信、大きくこの2つが新たな「プロデューサー」さんを開拓するメディアなのかなと思っています。
――コロナ禍で大打撃を受けたライブ興行ですが、一部のライブでは声出しも解禁され、5月8日からはコロナの5類への引き下げも決まりました。ライブエンタメの今後の見通しはいかがでしょうか。
波多野: 感染状況や法令など、さまざまな要因に左右されるところもあるので断言できないところなのですが、コロナ前の平常運転に戻していきたい気持ちが間違いなくあります。映画館などのライブビューイングも再開しつつあります。
一方で、コロナ禍によって培われたオンライン配信や、オンライン上でもライブを楽しめる文化は、コロナが終わっても残していきます。こうしたオンラインの展開も今後より強化して広げていくことで、「3.0 VISION」につなげていけたらと考えています。
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