日本のスタートアップは、なぜ世界で活躍できないのか:IGPI冨山和彦氏×テラドローン徳重徹氏【前編】(1/3 ページ)
なぜ、日本には世界で活躍するスタートアップが少ないのか? なぜ、破壊的なイノベーションを起こす経営者が現れないのか? 日本の産業とスタートアップを取り巻く停滞感に迫る。
なぜ、日本には世界で活躍するスタートアップが少ないのか。なぜ、破壊的なイノベーションを起こす経営者が現れないのか。
ボストン・コンサルティング・グループなどを経て、旧産業再生機構の最高執行責任者(COO)に就任し、カネボウをはじめ多くの再生案件に関わる経営共創基盤(IGPI)の冨山和彦氏と、ドローンを用いたビジネスを世界で展開するベンチャー企業テラドローン代表の徳重徹氏が、日本の産業とスタートアップを取り巻く停滞感について対談した。
グローバルに弱い日本のスタートアップ
テラドローン・徳重徹(以下、徳重): 冨山さんは、日本のスタートアップの現状をどのように捉えていますか。
IGPI・冨山和彦(以下、冨山): 日本経済を再成長のモードに持ちこむために、既存企業や経済団体に「頑張れ」と言っても限界があります。仕組みを壊すには、スタートアップから新しい産業が生まれていかないといけません。
ただ、スタートアップエコシステムの高い山を作るには裾野を広げないといけないし、ノッポな山だとすぐに折れてしまいます。
政府が掲げた「スタートアップ育成5カ年計画」は裾野を広げるには実効的ですが、グローバル視点が脆弱です。
われわれは北欧でVC(ベンチャーキャピタル)をやっていますが、国内の人口も経済規模も小さいので現地のベンチャーは最初からグローバル狙いです。日本のベンチャーも国内で頑張って海外に持ち込むのではなく、早い段階でグローバルモードにステージを移したほうがいいと思います。
徳重: グローバルの観点を踏まえると、テラグループは「新産業で世界に活躍する」をテーマにEV、ドローン、建築DXの事業を同時並行で展開してきました。シリコンバレーでベンチャーをやっていたこともあり、「世界で勝つ」との思いがずっとあります。
ドローンについては、インターネットの時代が来た時みたいにいずれインフラになると思っています。シェアをとにかく取るためコロナ前は年に何度も世界1周ツアーをしているくらいに回っていました。資金調達も6回実施しましたが、ほぼ決まりかけていた20億〜30億円の案件で断られたこともありました。だから、挫折しながら相当鍛えられてやっと花開いてきた印象です。
先日、アラムコのVCから約18.5億円の調達を受けましたが、彼らが広い国土で点検、測量とさまざまな形でドローンが活躍できるとの見立てがあってパートナーを探していた背景があります。世界中の50社から3社に絞られ、そこから最後の1社として選ばれました。
世界を舞台に失敗しながらもそれなりに強くなり、大きなステージに行けたと思います。
冨山: 最初からグローバルモードでやっていたんですね。ただ、日本のベンチャーコミュニティーは、主にテック系は内向的な人が多い傾向がありますし、逆に外交的な人は、例えば西麻布などに遊びに行っちゃう傾向があるんですよ(笑)。
世界中に売り込んで契約もゴリゴリ取るような「グローバルに外交的な人」があまり多くないんですよね。だからこそ、日本のベンチャーが持っている技術力とか潜在的な競争力が世界で正当に評価されていない印象を受けます。
徳重: 確かにおっしゃる通りですね。
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