「妊娠したら辞めてくれ」――マタハラがまん延する職場の特徴と対処法:働く女の“いらいら”(2/3 ページ)
本連載では、職場で働く女性ならではの“お悩み”を解説する。今回のテーマは「妊娠報告・産休・育休」。マタハラがまん延する職場の特徴と対処法とは?
「妊娠したら辞めてくれないと、新しい若い子が入ってこない」
最初に、女性が少ない組織で働くワーキングマザーのほなみさん(30代女性)の事例をご紹介します。
私は結婚して妊活を始め、幸い子どもを授かりました。しかし、私の職場は男性の割合が高く、働いている女性も既婚者が少ないのが現状で、妊娠したことをなかなか言い出せなくて……。本社も男性だらけで、産休で休んでも文句を言われそうな雰囲気。そもそも、産休の前例も無いので、寿退社が当たり前な感じの会社なんです。
出産後も働くつもりですが、産休のことを含め、職場では相談できる相手がいません。話すこと自体にも、ものすごく抵抗を感じています。飲みの席では男性上司に、「妊娠したら辞めてくれないと、新しい若い子が入ってこない」と冗談混じりに言われて。こちらも「居座ります!」と冗談で返すのですが、出産したら辞めるものだと皆が思っているみたいです。周りにできるだけ迷惑を掛けたくないとは思いますが、理解者がほとんどいない状況はつらくて……。
ほなみさんは、出産後も仕事を頑張ろうと思っているけれど、産休の前例がないこと、ハラスメントにも該当する上司からの発言を受け、職場には自分の理解者がいないと苦しんでいました。
「妊娠・産休」の職場理解と心理的安全性
環境整備がどんどん進み、男女とも産休・育休の理解は深まってきているといわれていますが、まだまだ産休の前例がない職場も存在しています。ほなみさんのように、寿退社が当たり前という風潮の組織に属し、マタニティハラスメントにも該当するような発言を受けると、「そもそも妊娠しても大丈夫なのだろうか」といった不安に直面し、心身に悪影響を及ぼしかねません。
妊娠や産休に対し理解が進んでいない職場に共通する傾向としては、「子どもを産み、育てながら働くこと」への理解が深まっていないことが挙げられます。こういった職場では、社員が育休・産休に関して意見を言えていないことが多く、組織は「誰も言ってこないし、このままでいいか」と環境整備を進めず、そのまま放置しているケースも。
子どもを産み、育てながら働くことへの理解を深めるためには、社員の方が勇気を出して「声」を挙げていくことが必要だと考えます。「前例がないなら、私が前例になる」という意識を持ち、組織の意識改革も男性の育児休暇も必要なことだと、一人一人が意思表示をすることが大切です。
安心して働き、子育てをするためには、“心理的安全性(Psychological Safety)”の高い職場づくりが必須です。心理的安全性とは、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発信できる状態のことをいいます。簡単に言うと、「本音で話せる職場」であるということ。チームの他のメンバーが、自分の発信を拒絶したり、罰したりしないと確信できることが、非常に大切なのです。
16年にハーバード大学のエイミー・エドモンドソンらが発表した研究によると、「心理的安全性を作り上げる上では、リーダーの役割が重要である」といわれています。特に、「成長支援」「相手の話に耳を傾ける傾聴」といった部下との関わり方を重視することが、心理的安全性を高めることにつながるとされています。
「相手の話をしっかり聴く」「嫌みや回りくどさがない」「飾ったり隠したりしない」――。リーダーは是非、こういったコミュニケーションを自ら進んで実践し、職場の心理的安全性を作ってみてはいかがでしょうか。
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