「従業員エンゲージメント」向上のカギは”社外”にあった 調査から見えてきたこと:人的資本の開示義務化(3/3 ページ)
顧客を大切にする企業であるほど「従業員エンゲージメント」(自社への愛着・信頼の度合い)が高い――。そんな結果が、6000人超を対象とした調査から分かった。ビジネス環境が大きく変化し、企業の「非財務情報」に注目が集まる中、人材をコストではなく資本と捉える「人的資本経営」が今後、企業の競争優位を左右するとされる。人的資本経営の重要指標となる従業員エンゲージメントが、企業の「顧客志向」と関連しているとの調査結果は、人的資本経営の実現を目指す企業にとってヒントになりそうだ。
一般社員と役員で自社の「顧客志向」認識に差
一方で、会社の顧客志向度合いの認識には、一般社員と役員クラスで大きな差があることが分かった。「あなたの会社はどの程度、顧客志向だと思いますか」という質問に対し、「非常にそう思う」を選択した割合は、役員・部長クラスは22.2%、課長・係長・主任クラスは12.2%、一般社員は11.0%となった。
役職が高いほど、自社が顧客志向であると認識している割合が高く、一般社員に近づくにつれて「当てはまらない」と回答する人の割合が増えており、経営陣が持つ顧客志向の姿勢が会社全体にまで浸透していない可能性がうかがえる。
顧客志向を組織に浸透させるためには
従業員エンゲージメントの向上に関連する顧客志向を社内に浸透するためには、どのような取り組みが企業に求められるのか。調査を実施したエモーションテックの担当者は「経営層が顧客志向経営への理解と覚悟を持ち、経営陣自らが行動することが重要」だと指摘する。
具体的には、経営戦略上に顧客志向経営を組み込み、従業員に対して顧客志向の重要性をトップメッセージとして発信するなど、経営陣自らが先陣を切って行動することが重要だという。
さらに、現場の顧客志向を高めるための適切な仕組みを創ることも必要だという。例えば、CX(カスタマーエクスペリエンス、顧客体験)推進者を社内に設置し、定量的な顧客ロイヤルティ指標を目標に定めることで、経営層と現場で意思疎通が図れるようにし、顧客ロイヤルティを高めるための施策を展開する。
企業の取り組みの具体例では、人材サービス大手のアデコが20年、「Customer Experience(カスタマーエクスペリエンス)推進部」を設立。「カスタマーセントリシティ」(顧客中心主義)を共通ワードとし、顧客志向を向上させるための社内の取り組みを強化しているという。
人的資本情報の開示が義務付けられ、23年3月期決算の有価証券報告書から大手企業を中心にいよいよ開示が始まる。重要指標の従業員エンゲージメントと関連する「顧客志向」の浸透に向けた取り組みは、企業の競争優位を確保する上で、避けては通れないものとなりそうだ。
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