開示義務化迫る「人的資本」 認知度や対応状況はどうなっているのか?:何が分かったのか(2/2 ページ)
2023年3月期決算から上場大手を中心に人的資本の開示が義務化されるが、認知度や対応状況はどうなっているのか。マイナビの調査内容を分析する。
ISO30414国際基準をどこに公開するか
人的資本に関する情報開示のガイドラインである「ISO30414」国際標準基準を、今後どのような場所に公開したいと思うか質問した。
同調査では、公開する情報として「コンプライアンスと倫理」「コスト」「ダイバーシティ」「リーダーシップ」などを列挙している。そして、それぞれの情報を公開する場所として、投資家向けのIR関連情報、求職者向けの採用関連情報、従業員向けの社内向け情報を挙げている。
調査結果を分析すると、総人件費や平均給与と報酬の比率などを指す「コスト」に関しては、求職者向けが47.8%となり、投資家向けや従業員向けを上回った。この背景について荒木研究員は、「『平均給与と報酬の比率』に着目し、従業員待遇を正確に提示することが、求職者が会社を選ぶ際に有益であると考えている担当者が多いからだと考えられる」とコメントした。
また、人的資本情報開示の認知者込みベースでみると「コンプライアンスと倫理」は、従業員向けが54.0%で、求職者向けや投資家向けを上回った。この点について荒木研究員は「情報拡散の速度が速まった現代では、企業全体のみならず従業員一人一人のモラルもリスクになり得るため、コンプラ向上の姿勢を従業員向けに打ち出すことが実際のリスク軽減にもつながると考えられ、重視されているのではないか」と分析する。
なお、人的資本情報開示の準備、実施者のみにベースを絞ると「コンプライアンスと倫理」は投資家向けで62.3%と特に高い傾向があるという。これは、「コンプライアンスと倫理」の項目が最も数値化が容易で記述に適していることや、コンプライアンス違反の企業活動が企業価値急落につながる事例があることなどが背景にあるという。
ISO30414国際標準基準と「求職者への入社意欲向上」および「従業員のエンゲージメント」の関係について調査すると、「効果がある」という回答が否定的な回答より多い結果となった。この点について荒木研究員は「求職者に関しては適切な情報開示によって健全な経営姿勢を示すことで企業への信頼感を高めようとしているのではないか。また、従業員に対しても信頼感の醸成という側面は同様で、より長く働き続けてもらうためには、人的資本情報の透明化が重要だと考えていると推測される」とコメントした。
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