苦戦続いたイトーヨーカドーの衣料品 カリスマ登用、売り場大改革も不発:業界の専門家に聞いた(1/2 ページ)
国内14店舗の閉店が発表され連日話題となっているイトーヨーカ堂。アパレル事業からも完全撤退し、食料品中心に事業を絞るという。なぜヨーカ堂のアパレル事業は低迷し、祖業である同事業を手放さなければならなかったのか。専門家に見解を聞いた。
国内14店舗の閉店が発表され連日話題となっている、セブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂。今後は肌着などの一部を除いて衣料品事業から撤退し、食料品を中心に展開していくという。
同社の衣料品事業は、1920年に浅草で洋品店「羊華堂」として開業して以来100年以上の歴史がある。なぜ祖業である衣料品事業は低迷し、手放さなければならなかったのか。顧客の支持を得られなかった原因について、アパレル業界に長年身を置く、ファッションビジネス・コンサルタントの磯部孝氏に見解を聞いた。
トライ&エラーを重ねていたヨーカ堂
ヨーカ堂はこれまで、衣料品事業に対してさまざまな改革に挑戦していた。
具体例として、2005年に「カリスマバイヤー」と呼ばれた藤巻幸大氏を立て直し役に迎えたことがまず挙げられる。藤巻氏は伊勢丹入社後、「解放区」「バーニーズ・ジャパン」などのブランド立ち上げを成功させた人物だ。独立後は、靴下の製造販売を手掛ける福助の経営再建に尽力した。
同氏はヨーカ堂に取締役執行役員衣料事業部長として招き入れられ、什器や商品の並べ方を見直すビジュアル・マーチャンダイジングに着手し、一定の成果を上げた。しかし、続く新ブランドの立ち上げでは苦戦し、体調不良などの事情が重なり08年に退任している。
15年には、同じくセブン&アイ・ホールディングス傘下のそごう・西武とプライベートブランド「セットプルミエ」を立ち上げている。「すべての人に、上質を。」をブランドコンセプトに掲げ、30〜40代女性を中心に訴求。ファッションデザイナーのジャンポール・ゴルチエ氏や高田賢三氏とのコラボレーションを発表した。
また同じく15年に、雑貨専門店「Francfranc」を運営するバルス(現:Francfranc、東京都渋谷区)と共同で、インテリアショップ「BON BON HOME」を展開した。
幅広い年代を想定したベーシックなインテリア雑貨や、親子向けにキッチンやガーデニング用品、寝具、ソファなど約3000商品を取りそろえた。ところが17年に、いずれのブランドも廃止している。
22年7月には、イトーヨーカドー幕張店(千葉市)を大規模リニューアルする試みを行っている。子育て世帯を意識して「時短ワンストップショッピング」を掲げ、衣食住に関わる生活必需品を1階に集約させた。まとめ買い需要を効率的に取り込もうとする同社初の試みだった。
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