「謝罪会見は正直にしゃべればいい」の誤解 「大丸別荘」前社長の発言を振り返る:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
大浴場の湯を年に2回しか入れ換えていなかった老舗旅館「大丸別荘」の元社長が遺体で見つかった。自殺防止の観点からこの話を扱うのはよくないが、同じような悲劇を繰り返さないために何か提言できることはないのか。記者会見の発言を振り返ると……。
謝罪会見でのセオリー
亡くなった方のことをああだこうだと言うのは心苦しいが、今回の元社長の謝罪会見はその典型だった。例えば、元社長は繰り返しこのような主張をした。
「レジオネラ属菌は一般細菌で、どこにでもいるという軽い気持ちがあった。それまでもレジオネラ属菌云々で、特別、訴えというか、お客さまからの声がなかったので、かなり安易に考えていた」(産経WEST 2月28日)
あれだけ何度も強調しているということは、元社長は心の底から「レジオネラ菌など大したことがない」と思っていたのだろう。が、一方で、温浴施設などでレジオネラ菌が原因で亡くなる人がいるのも紛れもない事実だ。新型コロナのときもそうだったが、「リスク」というものに対する感度は人それぞれなので過小評価をすれば当然、「安全軽視」「無責任」と叩かれてしまう。
というわけで、謝罪会見ではそういう「地雷」を避けることがセオリーだ。つまり、レジオネラ菌がそれほど危険ではないとかなんだかとか余計なことはいっさい言わず、「私の安全に対する認識が甘かった」という真摯(しんし)な反省を繰り返すだけでいいのだ。
また、お湯の入れ替えの詳細について問われた際も、元社長は以下のように、正直すぎるほど赤裸々に答えてしまっている。
「どういう風にというか、年に2回、盆と正月に4、5日、旅館を休んで整備するので、そのときに念入りにやればいいと。(塩素の注入についても)『入れたきゃ、ちょこっと入れておけ』という感じだった」(同上)
関連記事
- ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。 - 登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。 - 丸亀製麺は“讃岐うどん”の看板を下ろしたほうがいい、これだけの理由
またまた炎上した。丸亀製麺が讃岐うどんの本場・丸亀市と全く関係がないことである。このネタは何度も繰り返しているが、運営元のトリドールホールディングスはどのように考えているのだろうか。筆者の窪田氏は「讃岐うどんの看板を下ろしたほうがいい」という。なぜなら……。 - 『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』――最も高い家に住んでいるのは? 査定してみた
国民的アニメの主人公は、どんな家に住んでいるのでしょうか? 『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』の自宅を査定したところ……。 - 「田園都市線」は多くの人が嫌っているのに、なぜ“ブランド力”を手にできたのか
「通勤地獄。なぜあんなところに住むのか」――。SNS上で「東急田園都市線」が批判されている。街は整備されていて商業施設もたくさんあるのに、なぜこの沿線をディするのか。その背景に迫ったところ……。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.