なぜ「さつまいもブーム」が起きているのか 背景に“エリートの皮算用”:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
「さつまいもブーム」が起きている。街には焼き芋や大学イモの専門店が増えており、おしゃれなカフェでもさつまいもを用いたスイーツが販売されるようになっているのだ。その背景に何があるのかというと……。
農林水産省のシナリオ
農林水産省の「食料の安定供給と不測時の食料安全保障について」(PDF)という資料には、深刻な食糧不足に陥ったときに、国民生活安定緊急措置法という法律に基づいて、国民の理解の下に規制を強めていくというシナリオがまとめられている。
その中には「1人1日当たり供給熱量が2000kcalを下回ると予測される場合を目安」というレベル2の食糧危機に陥ったら、こうすべきという指針がはっきりと記されている。
「供給熱量確保のため、小麦、大豆等を増産しつつ、地域の農業生産の実態も踏まえ、熱量効率の高いいも類への生産転換を実施」
食糧危機に陥ったときに慌てて、さつまいもを植え始めるようでは人々は飢えてしまう。理想としては、平時から、農家が干し芋や焼き芋、スイーツなどさまざまな用途で生産量を増やしておいてくれていることであることは言うまでもない。
つまり、「さつまいもブーム」は生産転換を促すということで「有事の備え」の後押しになっているのだ。
そこに加えて、このブームが非常にいいのは国民の啓発・啓蒙にもつながっている点だ。戦争や災害で急に食糧危機が訪れて、イモへの生産転換を行うと食べ物がイモだらけになるということだ。そうなると、ぜいたくに慣れきった国民からは大ブーイングが予想される。
例えば先の資料には、食糧が海外からストップした場合を想定して、「国内生産のみで2135kcalを供給する場合の食事メニュー例」も紹介されている。それによれば、朝食はご飯を茶碗一杯に、焼き芋2本と糠漬け、昼食は焼き芋2本とふかし芋1個と果物、そして夕食は、ご飯茶碗一杯と、粉吹き芋1皿、焼き魚1切とある。
つまり、冒頭で紹介した鈴木氏の記事タイトル通りの「三食イモ」は大袈裟な話でもなんでもなく、霞ヶ関のエリートたちが大真面目にリスクを想定した結果出てきた“ガチシナリオ”なのだ。
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