なぜ「さつまいもブーム」が起きているのか 背景に“エリートの皮算用”:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
「さつまいもブーム」が起きている。街には焼き芋や大学イモの専門店が増えており、おしゃれなカフェでもさつまいもを用いたスイーツが販売されるようになっているのだ。その背景に何があるのかというと……。
さつまいもへの依存度
「そんな大昔のことを引っ張り出すなよ」とあきれる人もいるだろうが、今も農水省がさつまいもで食糧危機を乗り越えようとしていることからも分かるように、考え方としてはこの時代から何も変わっていない。
今もさつまいもを用いてエネルギー不足を解決しようという組織が、全国に少なからず存在している。
その代表が、芋焼酎「黒霧島」で知られる霧島酒造だ。
同社は06年に鹿島建設との共同研究により、焼酎粕や芋くずなどさつまいも由来の副産物からバイオガスを発生させる「焼酎粕リサイクルプラント」を本社工場に建設し、14年からはそのバイオガスを用いた発電事業「さつまいも発電」をスタートしている。今後はさらにそれを拡大して、さつまいもをエネルギーに変換して100%循環させるという壮大な構想を掲げている。
また、近畿大学生物理工学部教授の鈴木高広氏は、さつまいもを発酵させて、メタンガスを発生させる――。こうした手法を用いた発電方法を研究している。
『サツマイモを「次世代自然エネルギー」に 燃料代節約に貢献の試算も』(マネーポスト 2022年1月15日)
食糧とエネルギーのない日本の「危機」をさつまいもでなんとか乗り切ろう、という日本人の発想は、太平洋戦争のときから1ミリも変わっていないのだ。
歴史は繰り返す。あの戦争もやる前から惨敗が分かっていたのに、国民の熱狂に流されて突っ込んでいったように、この国の政治ではもはや「食糧危機」は避けられない。そのとき、われわれができることは、飢えで亡くなる人を少しでも減らすということしかない。さつまいもはその救世主になるかもしれないのだ。
これから食糧ビジネスに参入したいという企業はぜひ、さつまいもに注目していただきたい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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