賃上げできない中小企業はどうする? 小さな保育園の「福利厚生」から学べること:単なるマネはダメ(2/5 ページ)
賃上げする企業が相次いでいるが、賃上げできない中小企業はどうすべきか? 筆者は独自の「福利厚生」に取り組むべきだと指摘する。
学生が企業に求めるのは「安定性」
マイナビが毎年採用を控える学生に実施しているアンケート調査によると、15年以降、企業選びの基準に変化が出ています。
03年卒から23年卒までの時系列のグラフを見ると、学生が企業に求める第1位は、19年卒までずっと「自分がやりたい仕事ができる会社」でした。しかし、それが逆転したのが20年卒。ここで1位に躍り出たのが「安定している会社」です。以降23年卒までトップが続いています。また、ここにきて上がってきているのが「給料のいい会社」「休日、休暇の多い会社」です。
安定している会社とはどういったものでしょうか。1位は「安心して働ける環境である」、2位は「福利厚生が充実している」、だいぶ差があいて3位が「業界大手である」です。
企業の魅力はいかに安心して働けるか。そのポイントは「安心して働ける環境整備」と「福利厚生」にあるようです。世の中がそれだけ不安が多く、これからどうなるか分からないという学生心理の表れともいえるでしょう。
つまり、「いかにして働きやすい会社つくるか」を考えると、魅力ある会社になれるということです。賃上げ以外に工夫をしていく余地はまだあるのです。
大企業も「賃上げさえすればOK」ではなく、いかに働きやすい会社にするかという「人的資本経営」に力を入れる必要があります。そうでないと、せっかくの賃上げも水の泡ということになりかねません。
働きやすい会社とは
働きやすさを向上させるには、2つの福利厚生を整備することが考えられます。1つ目は法定福利厚生制度で、中心となるのは保険制度です。健康保険や厚生年金、雇用保険など法律で定められた企業に必要な諸制度です。これは給与と並んで従業員にとっては最低限必要な制度です。
2つ目は法定外福利厚生制度です。これは企業が独自に定めているもので、法律で義務付けられたものではなく、企業が任意に定めるものになります。
企業によって独自に整備できる制度ですから、社風や企業イメージに合った内容を工夫できます。そのため、企業のブランディングとしても機能する制度といえます。
法定福利厚生が未整備の中小企業もあるので、まずはこちらを法律にのっとった形に整備する必要があります。その上で、やるべきことが法定外福利厚生の充実です。
関連記事
- イオン、パート「7%賃上げ」の衝撃! 「レジ打ち」が減った職場で起きる大変革とは
イオングループが自社のパート40万人の時給を7%引き上げると発表。イオンでも働き方が大きく変わり、他業界にも大きな影響がある。 - レゴランドってそんなにひどいの? 家族を連れて行ってみた
「隣接する商業施設からテナントが撤退」「水筒の持ち込み禁止」などのニュースで注目を浴びているレゴランド。ネット上では酷評する声もあるが、実際はどうなのだろうか。記者が家族を連れて遊びに行ってみた。 - なぜ女子の半分が泳いでないの? ジェンダーレス水着の開発者が語った“忘れられない光景”
フットマークのジェンダーレス水着が話題になっている。性の悩みだけでなく、さまざまな理由で「肌を隠したい」生徒のニーズに対応するのが狙い。開発者にその背景を聞いた。 - トイレ利用後に買い物しない人が約4割!? ローソンがトイレの扉にアートステッカーを貼った背景
全国のローソン店舗のトイレ付近に、アートステッカーを貼る取り組みを始めた。トイレをいつもきれいに使ってくれる人への感謝を示す。背景にあるコンビニトイレの課題とは? - ファミレスは危機に陥っている!? サイゼリヤとガストで明暗が分かれたワケ
ファミレスの2大巨頭「サイゼリヤ」と「すかいらーくHD」。すかいらーくの主力であるガストが、サイゼと比べて業績面で苦戦している。背景には何が?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.