相鉄・東急タッグの「新横浜線」開業 14路線の巨大鉄道網構築に至った背景とは:対抗か、協力か(1/3 ページ)
3月18日の相鉄・東急新横浜線の開業は、巨大なネットワークを生み出した。鉄道各社にとって同業他社は競争相手であり、協力相手でもある。相互乗り入れなどの歴史から、鉄道の「共存共栄」モデルを探る。
3月18日の相模鉄道(相鉄)・東急新横浜線の開業は、首都圏の鉄道網を再構築することになった。首都圏の複数の私鉄が新横浜で結ばれ、関西方面とのアクセスが向上した。
今回の開業は相鉄と東急電鉄だけに関係しているものではない。相鉄と東京メトロ副都心線・東京メトロ南北線・都営三田線・東武東上線が結ばれることになり、7社局14路線が行き来するネットワークになった。
相鉄・東急新横浜線には西武鉄道の車両は乗り入れないものの、西武鉄道方面から相鉄線方面には、同一ホーム上の乗り換えで行けるようになり、それだけでも利便性は向上する。
一般に、同業同士は競争関係にある。しかし同業ゆえに商圏が地続きであり、事業運営上のリスクとリターンを同じくする存在であるならば、「共存共栄」路線を選ぶ局面もあるだろう。今回の新路線開業によって生まれた広大な相互乗り入れネットワークは、その象徴なのではないか?
競合同士の協力なくして、鉄道ネットワークはつくれない
関東圏の鉄道では、従来から「相互乗り入れ」が行われていた。地下鉄と地上を走る鉄道の乗り入れが代表的だ。
太平洋戦争前から、郊外へ向かっていた私鉄が都心に乗り入れる計画があった。その計画が地下鉄網の拡充に際して、「相互乗り入れ」という形で実現する。私鉄の都心への延伸は、私鉄と地下鉄の協力によって、どちらにもメリットがある形で実現した。
都営浅草線や営団日比谷線(現在の東京メトロ日比谷線)がその始まりであり、その後私鉄や国鉄の各路線と東京の地下鉄が相互乗り入れするようになっていった。これが、鉄道の「共存共栄」体制の始まりである。
ある鉄道事業者から地下鉄に乗り入れ、別の鉄道事業者へとまた乗り入れていくシステムは、東京の地下鉄の基本的な姿となった。それゆえ競争関係にある鉄道各社も、現場では協力する体制を整えることになった。
ただしそれまでは、東京の東側と西側の事業者がそれぞれ別々で地下鉄と相互乗り入れを実現させていく傾向があった。この構図が大きく変わることになったのが、東京メトロ副都心線の開業と、副都心線と東急東横線の相互乗り入れである。
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