人的資本経営で求められる「全員戦力化」 キーとなるミドルマネジャーの役割とは:専門家が解説
人的資本経営の関心が高まっている。学習院大学の守島基博教授が、変化の激しい時代に求められるマネジメントの背景を解説する。
リンクアンドモチベーションは2月28日、「人的資本経営」の実践をテーマにしたセミナーを開催した。同セミナーでは、学習院大学経済学部の守島基博教授が「人的資本経営時代に求められる『全員戦力化』を実現するポイント」について解説した。本記事では、その内容を要約して紹介する。
人材マネジメントを取り巻く変化
守島教授は、人材マネジメントを取り巻く環境に4つの大きな変化が起きていると指摘する。
1つ目は経営戦略の変化だ。DXの浸透、グローバル化への対応、事業ドメインの再構築など、企業の戦い方がどんどん変わってきている。
2つ目はビジネスパーソンの意識変化だ。ワークライフバランスの重視や多様性の尊重など、価値観が多様化している。守島教授は「今の学生も、10年前や15年前と比べて大きく変化している」と語った。
3つ目としては、新型コロナウイルスの感染拡大が挙げられる。働き方、組織の在り方、マネジメント手法を大きく変える可能性がある。
4つ目は、人的資本経営への関心が高まっていることだ。
守島教授によると、こうした状況で求められる人材戦略は「全員戦力化」だという。できるだけ多くの人を丁寧にマネジメントし、戦力化することを指す。これは、働き手が不足する状況に対応するという側面もある。
具体的には、個々人の事情に配慮しながら可能な限りパフォーマンスが高まるように支援する「全員対象のタレント・マネジメント」と、企業が進む方向性をメンバーに分かりやすく説明する「パーパスやミッションのパーソナライズ」が求められる。そして、この2つを実現するキープレイヤーは、現場の管理職(ミドルマネジャー)だという。
大きな役割を期待されているミドルマネジャーだが、守島教授は「課題過多で忙しく、疲弊している」と指摘する。背景には、経営層が成果を求めるだけでなく、コンプライアンス推進、メンバーのメンタル対応、働き方改革などを任せてきたことがある。
そこで、具体的に何をすることがメンバーの戦力化につながるかを前提に「マネジャー業務のリデザインが必要」だと強調した。
重要なのはどう実践していくか
以上が講演内容の要約だ。
守島教授が人的資本経営の要点について「人を大切な資産として企業経営の中でどう扱っていくかということだ」と語ったのが印象的だった。経営層や人事領域で活躍するビジネスパーソンにとっては当たり前のことかもしれないが、それを具体的にどう実践していくのか、各企業の知恵が求められていると感じた。
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