「正義の承認欲求モンスター=カスハラ」に対応するには、どうすればいいのか:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
店員や従業員に対して、過度な要求をするカスタマーハラスメントが社会問題になっている。罵詈雑言を浴びせる客にどのように対応すればいいのか。
カスハラ客に「勝ちを譲る」
九州にお住まいの方たちはなんとなく理解できるだろうが、海が隔てているだけで、実は東京よりも朝鮮半島のほうが距離的に近いので、太古の昔から朝鮮半島とは文化的な交流もある。おまけに戦前は日本式の教育を受けたので、実は物事の考え方も非常に近い。ハングルと日本語には意味も発音も同じものがたくさんある。
感情的なわだかまりはあるだろうが、こういう国民性の似ている部分があることを素直に認めて、「先進国」から真摯(しんし)に学んでみるというのも、ひとつの手ではないだろうか。
では、具体的にどのあたりを学ぶべきか。いろいろなご意見があるだろうが、個人的には「情に訴える作戦」がいいと思っている。
韓国の某石油会社では、コールセンターに電話をかけると、オペレーターにつながるまでの保留音に、「これから私の大好きなママがご案内させていただきます」「これから私の大切で、働き者の娘が対応させていただきます」というアナウンスが流れるそうだ。これは実際にオペレーターなど従業員の家族の音声を録音したものだという。
つまり、「今あなたが怒鳴って、罵声を浴びせようとしている人にも、生活や家庭があるんですよ」と伝えることで、怒りを鎮めてオペレーターに敬意をもって接することを狙っているのだという。
これは日本のカスハラ客にも有効ではないかと、個人的には思う。先ほども申し上げたように、カスハラ客とは「正義の承認欲求モンスター」なので、「毅然とした態度でのぞむ」とか「理不尽な要求に屈しない」みたいな企業側の正義をぶつけると、「互いに一歩も引かぬ大激戦」になる。
ロシアとウクライナを見ても分かるように「戦争」というのは「正義と正義のぶつかり合い」だ。互いに自分が絶対的に正しいと信じているので、間違っている相手を徹底的に攻撃できるし、相手は「正義に歯向かう悪」なので命を奪うことも、残虐なことも躊躇(ちゅうちょ)なくできる。
カスハラ対策も同じで、正義を振りかざす客に、「店側の正義」で立ち向かうと「どちらかが屈服するまでの潰し合い」にしかならないのだ。
だからこそ筆者は以前から、カスハラ客に「勝ちを譲る」という対策をお勧めしている。「正義」で暴走するカスハラ客というのは、店から賠償金をぶんどったり、土下座させることが本来の目的ではなく、自分の「正義」を相手が認めてくれればいいのだ。
この「勝ちを譲る」という対策に「情に訴える作戦」は相性がいい。オペレーターに対して一通り自分の「正義」のお説教をする際にも、「この女性も家で小さな子どもが待っているのか」ということがチラリと頭の隅によぎれば、「まあ、今日はこれくらいにしてやるか」と正義とは何かを説く「お説教タイム」が短くなる可能性があるのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
バーガーキングがまたやらかした なぜマクドナルドを“イジる”のか
バーガーキングがまたやらからしている。広告を使って、マクドナルドをイジっているのだ。過去をさかのぼると、バーガーキングは絶対王者マックを何度もイジっているわけだが、なぜこのような行動をとるのか。海外に目を向けても同じようなことをしていて……。
ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。
登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。
「マルチ商法の優等生」アムウェイは、なぜこのタイミングで“お灸”を据えられたのか
日本アムウェイ合同会社に対して、消費者庁が勧誘などの一部業務を6カ月間停止する命令を出した。「昔から同じようなことをやっているのに、なぜ今なの?」と思われたかもしれないが、どういった背景があるのか。さまざまな憶測が飛び交っていて……。
「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。
