「正義の承認欲求モンスター=カスハラ」に対応するには、どうすればいいのか:スピン経済の歩き方(5/5 ページ)
店員や従業員に対して、過度な要求をするカスタマーハラスメントが社会問題になっている。罵詈雑言を浴びせる客にどのように対応すればいいのか。
「負け」ではなく「勝ち」
繰り返しになるが、カスハラ客に「理」は通じない。自分は正しいと信じて突き進む人を自制させるのは本来、法律などの強制力しかないが、現状日本ではそのようなルールはない。そうなると、できるのは「はい、あなた様のおっしゃる通りです」と言って、さっさと帰ってもらうことだ。
経済人類学者カール・ポランニーの座右の銘には「愚かな人にはただ頭を下げよ」というものがある。自分の「正義」を押し付けて、弱い立場の店員や公共交通機関の従業員に罵声を浴びせたり、暴力をふるうなど「愚かな人」以外の何者でもない。
そんな話の通じぬ人に対して、「毅然とした態度」とか「しっかり話せば分かってもらえる」なんて対応をするだけ不毛だ。だから、情に訴えて、ただ頭を下げる。「愚かな人」も「分かりゃあいいんだよ、こっちもこんな厳しいことを言いたかねえよ」と承認欲求が満たされて、振り上げた拳を下ろしやすくなる。
愚かな人には、気持ちよく目の前から消えていただくために、ただ頭を下げる。一見すると「負け」のような気がするが、従業員のメンタルヘルス的にも、身体の安全的にもこちらのほうが実は「勝ち」なのではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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