「子供の声は騒音ではない」と定めるだけで解決? 「子供が出す音」の問題は単純ではない(3/4 ページ)
マンションにおける騒音問題には、やっかいなケースが多い。20世紀まで住宅地内の騒音問題は、「お酒を飲んで、夜中も騒ぐ人」や「静かな住宅地内で楽器を大きな音で演奏する人」など、「大きな音を出す人」によって引き起こされるケースが多かった。ところが、21世紀に入ったあたりから異なる理由でマンションの騒音問題が発生するようになった。
うるさい。と思う人は30デシベル台の音も耐えられない
そのシニア夫婦は、テレビも点けず、音楽も聴かず、2人で読書を楽しむ生活スタイル。それまで住んでいた木造の一戸建てから、「鉄筋コンクリート造のマンションならば、外の音が聞こえず、静かに暮らせるだろう」とマンションに移り住んだ人たちだった。
もともと、音に対して敏感だったのである。
音に対して敏感な人たちは、真上に住んでいる家族に小さな子供がいることを知った。それで、耳をそばだてるように音を探っていたのではないか。
とはいえ、高齢になると聴力も下がってくるので、本当に足音が聞こえているのかはわからない。が、それでも本人が「うるさい」といえば、対応しなければならない。それが、共同住宅であるマンションの面倒さといえる。
結局、不動産会社の社員たちは騒音測定器を持ち込み、音の大きさを測った。その測定値をレポートにまとめ、騒音が生じているとは認められないと締めくくった。
このレポートに加え、子供が飛び跳ねることをさせないし、夜間は走ることをさせないことの確約を得て、シニア夫婦は引き下がった。が、「しぶしぶ」だった。
最後まで納得しなかったのは、数値の解釈だ。
子供が歩いて測定された騒音は、30デシベル台。昼の住宅地内や図書館内で40デシベル程度とされるので、30デシベル台はほとんど音がないといってよいレベルだ。
しかし、シニア夫婦は「30デシベルならば静か、と誰が決めたのか」と不満を表した。夫婦は、0デシベルこそ理想の静かさと誤解しているようだった。
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