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「子供の声は騒音ではない」と定めるだけで解決? 「子供が出す音」の問題は単純ではない(4/4 ページ)

マンションにおける騒音問題には、やっかいなケースが多い。20世紀まで住宅地内の騒音問題は、「お酒を飲んで、夜中も騒ぐ人」や「静かな住宅地内で楽器を大きな音で演奏する人」など、「大きな音を出す人」によって引き起こされるケースが多かった。ところが、21世紀に入ったあたりから異なる理由でマンションの騒音問題が発生するようになった。

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「なんで我が家が……」転居せざるを得ないケースも

 しぶしぶでも納得してくれるケースはよいが、あくまでも「足音がうるさい」といわれてしまうケースもある。あげくに、エレベーター内で子供がにらみつけられ、泣きながら帰宅することも……。そうなると、転居も考えざるを得ない。

 賃貸ならば、比較的楽に転居できるが、分譲マンションを購入した場合、転居は簡単ではない。中古で高く売れるときならばよいが、値下がりしている時期は、経済的な損失を出しながら、転居することになる。

 「気に入っていたマンションなのに、なんで我が家が……」そんな悔しい思いをしながら、転居を決意した家族も実際にみてきた。

 理不尽なクレームだが、それに反論することで自らにも生じてしまう嫌な気持ち、そして、万一相手が怒ってしまったときに家族に危害が及ぶかもしれない、というリスクを考えれば、さっさと転居し、新しい生活に切り替えたほうがよい。そう判断したためだ。


画像はイメージ

 住宅における騒音問題というと、「大きな音を出す人が原因」と考えられがち。確かに、20世紀までは夜中に騒ぐ人や楽器を演奏する人がいて、近所が迷惑するケースが多かった。

 しかし、今は事情が複雑となり、「うるさい」「はい分かりました」で解決する問題ばかりではない。

 単純に解決しない騒音問題は、それほど多いわけではない。が、一度起こると根が深く、こじれやすい。双方が納得し、円満に解決するために真に役立つ方策が求められている。

 「子供の声は騒音ではない」と定めるだけで多くの問題が解決するとは思えない。かといって、基準値を定めれば済むということでもない。実際に、工事現場には騒音の基準値が定められているが、基準値内でも「うるさい」という苦情が絶えない。「うるさい」と感じる基準が人によって異なるからだ。

 基準値をどう定めればよいのか……それも簡単ではないのだ。

 政府は、「子供の声は騒音か」というやっかいな問題を解決しようとしている。その行方を注視したい。

著者プロフィール:櫻井 幸雄(さくらい・ゆきお)

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住宅評論家。全国の住宅事情に精通し、現場取材に裏打ちされた正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞で連載コラムを持ち、Yahoo!ニュース「個人」でも住宅コラムを連載中。テレビ出演も多い。『買って得する都心の1LDK』など著書多数。代表作は『不動産の法則 誰も言わなかった買い方、売り方の極意』(ダイヤモンド社)

ヤフーニュース個人:「櫻井幸雄の住宅・現場主義

公式サイト:住宅評論家 櫻井幸雄の経歴と活動内容

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