日銀の植田和男新総裁による就任記者会見、期待されている発信力はどうだったか 非言語は課題あり(3/3 ページ)
10年ぶりの交代となった日銀総裁。植田和男新総裁が副総裁2人と共に就任会見を4月10日に開いた。岸田文雄首相は日銀の黒田東彦総裁の後任にふさわしい人物像について「主要国の中央銀行トップとの緊密な連携、内外の市場関係者への質の高い発信力と受信力が格段に重要になってきている」とコメント。日銀総裁に求められる発信力と受信力とは何か、広報の観点から考える。
分かりやすい言葉が好印象、非言語には課題
石川: 「前もって的確な判断」はまさにリスクマネジメントになりますね。私が発信力として着目した表現は、効果と副作用について「効果から副作用を引き算するとおつりが残るかどうかが評価の基準になる」と説明した部分。「おつり」という言葉がとても庶民的で分かりやすく、好感を持ちました。以前も国会での質疑応答(2月24日 所信聴取)で「お昼はコンビニ弁当を食べて値上げ実感」と発言していたので市民感覚のアピールにもなりました。昨年の黒田前総裁が批判された「家計は値上げを許容している」発言を意識したようにも見えます。
石川: 黒田前総裁の10年間の評価についてもうまい回答でした。「私ができなかったような決断をした。外的なショックやデフレ経験が足を引っ張り、物価目標を達成できなかった。でも、デフレでない状況を作り出してバトンタッチしてくれた」。決断力を評価し、達成できなかった事実にも言及しつつ、努力を評価する。ハイレベルの回答でした。
桜内: 雇用についてコメントしなかったこともよかったといえます。金融政策として日銀ができることとできないことはよく分かっていらっしゃる。日銀ができることは物価の安定であって、賃金や雇用については何ともならない。この点も雇用に言及してしまった黒田前総裁との違いです。
石川: これは私の立場ではどうしても言っておかなければいけないことなので。非言語で気になった部分を2点指摘しておきます。植田総裁ですが、頻繁に上を見る癖と腕組みしながらテーブルに体重を前に乗せる癖は意識して改善していただきたいと思います。考える時に目線が上になってしまう人は多いのですが、白目が目立ってしまうので下目線にした方が品よくなります。愛子さまはその点はさすがにできていました。私も気を付けるようにしています。それでも時々やってしまいますが。机に体重を乗せるのは姿勢が悪くなり、堂々とした雰囲気に欠けてしまいますから避けた方がよいです。海外では立ち居振る舞いも見られるので改善していただけると印象の良さや発信力に貢献すると思います。
桜内: おお、それは気づきませんでした。そういった部分も見られてしまうのですね。私も気を付けないと(笑)。
著者プロフィール:石川 慶子(いしかわ・けいこ)
危機管理・広報コンサルタント/有限会社シン取締役社長
日本リスクマネジャー&コンサルタント協会副理事長
東京都生まれ。東京女子大学卒。参議院事務局勤務後、1987年より映像制作プロダクションにて、劇場映画やテレビ番組の制作に携わる。1995年から広報PR会社所属。2001年独立し、危機管理に強い広報プロフェッショナルとして活動開始。以来、企業・団体に対し、平時・緊急時の戦略的広報の立案やメディアトレーニング、メディアリレーションズ、広報人材育成等のコンサルティングサービスを提供。リスクマネジメント研究にも取り組み定期的に学会発表も行っている。2015年、外見リスクマネジメントを提唱、マイクロラーニングとして学習プログラム開発。日本広報学会理事、公共コミュニケーション学会理事歴任。
ヤフーニュース個人:「記者会見や企業のリスクマネジメントに関する解説や分析」
Twitter:@ishikawakeiko
公式サイト:広報コンサルタント 石川慶子 公式サイト
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