なぜ、新卒の応募者数が数倍に? 熱海の老舗旅館が本気で取り組んだDXの全貌:業務改善(5/6 ページ)
1806年に創業した老舗旅館「古屋旅館」(静岡県熱海市)では、社長がDXに本気で取り組んでいる。採用や業務効率化に効果が出ている理由とは?
コロナ禍で低迷
さまざまな経営改革を行っていた最中の2020年、新型コロナウイルスの発生により観光地熱海の様相は一変します。その当時のことを内田社長は次のように振り返ります。
「コロナ禍発生直後は当然ながら古屋旅館も大きな打撃を受けました。熱海の街から人が消えてしまいました。こうした中、世界規模のコンサルティング会社のレポートや、海外ホテルチェーンの動向などを細かく分析した結果、旅館・ホテル業界がコロナ前までの水準に復活するには最短で4年、最長でも7年かかる可能性が高いことが分かりました。この予測を知って、当初は私も大変落ち込みました」
しかし、古屋旅館はこうした絶体絶命の経営危機を今まで幾度となく乗り越えてきたそうです。1920年には大火で旅館が全焼していますし、太平洋戦争の終戦時には進駐軍に接収されていたという記録もあります。
古屋旅館の歴代の経営者は幾度となく経営危機を乗り越えてきおり、その先人の頑張りがあるからこそ17代目の自分が存在している――内田社長は「悩んでいる暇はない」と考えるようになります。
そこで、目先の5年、10年ではなく、長期的なビジネスモデルの変革を見据えて、さまざまな戦略を実行していきました。
「この先またいつか起こるか分からないパンデミックを見据えて、他の宿泊客と接触を極力少なく過ごせるよう、普通客室を次々に露天風呂付客室に改修していきました。こちらは全18部屋中15部屋の改装が完了しており、現在も改装は進行中です。さらにコロナ禍によってビジネスパーソンの働き方が多様化する中で、ワーケーションやテレワーク、会議、読書などに利用できるスペース『Second Robby 書ヲ読ム旅人』を開設しました」
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