東京23区にも“秘境”があった! 秘境駅になってしまう大きな2つの要因とは?:全部で5駅(3/3 ページ)
3月17日〜5月7日、JR東日本が「東京23区内秘境駅ラリー」なるイベントを開催した。23区内には100人いたら90人くらいが駅名を知らない、その駅で降りたことがないという秘境駅が存在している。ラリーで取り上げられた駅を含めて秘境駅を紹介するとともに、なぜ秘境なのかを分析していこう。
「ほぼ降りたことがない」で選ばれた田端駅
駅全体で見ると広がる余地はあるが、おそらく「この改札は出たことないだろう!」という意味で秘境駅とされたのが田端駅南口(4万7008人)。私も降りたことがなかったのだが、台地の端っこに出る無人改札だ。駅を出ると急坂、階段と地形的に分断された場所で、確かに背後に線路が見えなければ山手線駅とは思えない。
駅名が地名から消えた駅
さて、5駅ある秘境駅のうち、上中里駅、浮間舟渡駅、西大井駅、田端駅を紹介してきた。最後の一駅のヒントは「駅名が地名から消滅した駅?」とある。それを手掛かりに駅の写真から推察したのは常磐線三河島駅(1万1461人)である。ヒントの通り、かつての三河島という地名は今はなく、三河島駅があるのは荒川区西日暮里。三河島町は西日暮里、荒川、東日暮里などの町名に変わっているのである。
三河島駅では1962年に国鉄戦後五大事故の1つといわれる列車脱線多重衝突事故・三河島事故が起きており、160人の死者、300人近い死傷者が出た。この事故によって地名が消えたという説があるものの、三河島町の最初の町名変更が行われたのは61年のこと。当然、事故が理由ではないはずだが、話としては面白いということだろう。
この駅の場合には周辺に街の発展を妨げるような公園、公共施設、工場などはなく、逆にちょっと拍子抜けするくらい普通の平坦地に駅がある。だが、地図で周囲を見ると近隣に他の駅があることに気付く。特に大きいのは日暮里駅の存在。歩いて10分ちょっとのところに山手線、京浜東北線、東京メトロ千代田線などが利用できる駅があるのだ。だとしたら常磐線しかない三河島駅を使う必要は少ない。それ以外にも京成本線の新三河島駅もあり、場所によっては山手線西日暮里駅も使える。尾竹橋通りにはバスも多く走っており、三河島駅を利用しなくても困らない人たちが多いではないかと推察できる。
こうした駅は他にもあり、代表的なのは総武線の新日本橋駅(2万100人)。同駅は東京メトロの三越前駅、小伝馬町駅、山手線神田駅など複数の駅に囲まれるように立地、どこからでもアプローチできる。であれば、乗車人員が少ないのもうなずけるというものだ。前述の中央線2駅にも同じ要因がある。
以上、秘境駅がなぜ、秘境駅とされたのかを見てきた。だが、広がれないというキーワードで考えると、広がれないエリアがあっても発展してきた駅もあることに気付く。
上中里駅の一駅先、王子駅には駅前に飛鳥山公園があるし、三河島駅周辺の人たちが利用しているであろう日暮里駅の西側は谷中霊園などを中心にした寺町である。上野駅や原宿駅なども広がれないエリアを抱える。だが、これらの駅は乗車人員が多く、秘境駅といわれることはない。その違いはどこにあるのか。機会があれば、いずれまた書きたい。
著者プロフィール
中川寛子(なかがわ ひろこ/東京情報堂代表)
住まいと街の解説者。(株)京情報堂代表取締役。路線価図で街歩き主宰。
40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくりその他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
主な著書に「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版社)など。宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。
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