覇者イオン、コスモス、カインズに勝てるのか 中堅中小の「合従軍」戦略:小売・流通アナリストの視点(1/4 ページ)
スーパー、ドラッグストア、ホームセンターの上位企業の多くがM&Aで規模を拡大してきた。上位企業による下位企業の買収というのが自然と多くなる一方、下位企業が同盟するように経営統合して対抗するというパターンもある。
先般、スーパーのいなげやがイオンの子会社となって、最終的にはイオンの首都圏食品スーパーであるユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスと経営統合することが話題となったが、小売業においてはM&Aによる規模拡大は珍しいことでもない。大手小売業の大半が他社との経営統合によってシェアの拡大を実現しつつ、規模の利益を活用するという経緯を経てきており、当然ながらイオンがその筆頭といっていい存在だ。
スーパーに限らず、ドラッグストア、ホームセンターなどの業界も上位企業のほとんどがM&Aを大いに活用してきた。図表1は各業態の売上上位企業のM&Aの経緯を抜き出したものだが、活用してきた企業が多いことが分かるはずだ。
なぜM&Aが多く発生するのだろうか? 店舗小売業は各地で同時多発的に発祥するため、地域ごとの競争を経て勝ち残った企業が相応のシェアを獲得すると、隣の地域の勝者と戦いながらシェアを競うといった経緯を経て成長していくからだ。いわばスポーツ大会の県予選のような状態を経て、地区代表を決めるような感じといったらいいかもしれない。
ドラッグストアやホームセンターに関していえば、既に全国大会のベスト8が決まりつつあるような状況であり、シェアに関しては、かなり上位集約が進んでいる。そのため、M&Aのパターンとしては、上位企業による下位企業の買収というのが自然と多くなるのだが、強い上位企業に対抗するために下位企業が同盟するように経営統合する、というパターンも散見される。人気漫画『キングダム』になぞらえるなら、「合従軍」が同盟を組んで、共通の脅威である「秦」に立ち向かうといったイメージでもいいかもしれない。
関連記事
- 年間売上1億、ギョーザで起死回生の東スポ 次に狙う“鉱脈”とは?
購読者数の大幅減少が続くスポーツ紙。多くは一般紙の系列で、存続が危ういところまでは来ていない。後ろ盾がない「独立系」として奮闘する東スポが、起死回生の一手として打ち出したのが「ギョーザ」だった。 - ザッカーバーグ、メタバースの次は「ブラジリアン柔術」? 経営者が体を鍛えたがるワケ
世界の注目を集めるIT系起業家のイーロン・マスク。一方、主役の座を奪われ、苦戦続きのフェイスブック(現・メタ)創業者のマーク・ザッカーバーグ。彼が心のよりどころにしている意外なものが「ブラジリアン柔術」だ。 - 高円寺はなぜ、吉祥寺に勝てないのか 街とジェンダーの“なるほど”な関係
「個性的な店が減った」「観光地化している」とあれこれ言われながらも長らく人気の街、吉祥寺。中央線沿線にはより都心に近い駅もあるが、それでも吉祥寺は頭1つ抜けている。その理由をジェンダー的観点から解説しよう。 - バルミューダ、スマホ事業撤退 失敗の根本はどこにあるのか
5月12日、バルミューダはスマートフォン端末の事業から撤退することを発表した。家電製品では多くの消費者を引き付けている同社。一体なぜ、“スマートフォン”では、消費者との相思相愛の関係を築けなかったのだろうか。 - 人気店やスタートアップでにぎわう五反田 一方、懸念される建設ラッシュ
便利だが猥雑、どこかもさっとした印象のあった五反田駅周辺が変貌しつつある。駅周辺で複数の大規模な開発が進み、予約の取れない居酒屋が話題になり、スタートアップが多く集まっている。五反田に一体何が起きているのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.