バルミューダ、スマホ事業撤退 失敗の根本はどこにあるのか:本田雅一の時事想々(1/3 ページ)
5月12日、バルミューダはスマートフォン端末の事業から撤退することを発表した。家電製品では多くの消費者を引き付けている同社。一体なぜ、“スマートフォン”では、消費者との相思相愛の関係を築けなかったのだろうか。
5月12日、バルミューダはスマートフォン端末の事業から撤退することを発表した。2021年に発売したバルミューダフォンは、創業者である寺尾玄社長肝いりのプロジェクトだったが、発売直後から不評を買い、販売実績も振るわないどころか、端末の引受先だったソフトバンクも在庫の扱いに苦慮するほどだった。
しかし、そうした悪評の中にあっても寺尾社長は独自スマートフォン開発を諦めず、改良を施した第二世代モデルの開発を表明。新たに人材を雇い入れつつ、次世代機の開発を進めていた。
創業社長らしい前進力で突破できなかった理由は、“スマートフォン”という家電製品とは根本的に異なる価値観の製品を、本質的な部分で理解できなかったことに尽きる。製品価値の捉え方や視点が異なれば、同じ商品でも見える景色は変わる。
第一世代では失敗したものの、諦めずに前に進み続ける。
家電製品では寺尾社長のビジョンに共感する多くの消費者を引き付けたが、スマートフォンでは消費者に戸惑いをもたらした。なぜこのジャンルにおいて、バルミューダは消費者との相思相愛の関係を築けなかったのだろうか。
販売不振や性能だけでなく、価格戦略にも批判
さかのぼって22年2月10日。この日の夕方、バルミューダは21年12月期の決算発表を行った。家電とは異なる新しい商品軸として「バルミューダテクノロジーズ」を立ち上げ、その第1弾として投入したバルミューダフォンが業績に反映される最初の決算だった。
前年に発売したバルミューダフォンは7万8000円と上位機種の価格設定に対し、中位モデルの性能。さらにバッテリー持続時間が短いなどの弱点を指摘され、店頭での販売も振るっていなかった。
実はこの決算の直前には、ソフトバンク系列の店舗で早くも大幅な割引販売が開始しており、ネットコミュニティー上では販売不振や性能、電池容量不足だけではなく、価格戦略にも批判が広がっていた。
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