「セルフレジにキレる老人」問題どうする? 模索続く大手企業 要注目の「スローレジ」とは:先進事例を紹介(6/6 ページ)
セルフレジやセミセルフレジが急速に普及している。一方で、適応できない利用客の存在も注目される。どうやって解決すればいいのか?
日本でも「ゆっくりレジ」
日本でも「ゆっくりレジ」「おしゃべりレジ」などの名称で、スローレジの取り組みは少しずつ広がっています。ショッピングモールの「ゆめタウン」を展開するイズミ(広島市)では、福岡県の南行橋店でスローレジを導入し反響が大きかったことから、中国地方や九州などにある64の大型店全てに広げました。やり方は店によってさまざまなようですが、高齢者だけでなく小さい子ども連れのお母さんや車いすのお客さんなどにも好評だそうです。
また、福井県民生活協同組合は、高齢者に優しい店づくりの一環として、「ゆっくりレーン」を設置。岩手県滝沢市のスーパー「マイヤ滝沢店」では、認知症の方がボランティアに付き添われて買い物をすることができる「スローショッピング」という取り組みも始まっています(出所:「『スローレジ』ゆっくり会計、高齢者ら安心」読売新聞オンライン2021年10月4日)。
一方、タイパ(タイムパフォーマンスの略語。時間当たりの効果や満足度を示す)を激しく求める都心の駅前のコンビニやスーパーなどでは、セルフレジ、レジカート、レジレスなどの導入が進むことでしょう。
よりゆっくりか、より速くか――自社の顧客属性にあわせて対応方法を考えることが大切になります。
レジ問題は、買い物そのものに不便や不満を感じたり、ストレスを感じたりする人たちにどうやって快適に買い物をしてもらえるかを考えるきっかけとなるテーマです。
これからの小売業各社はレジ問題解決をきっかけに、より顧客満足度の高い店づくりを志向していく必要があります。経営戦略上、大変重要なことに気付かされるはずです。
著者プロフィール
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント
1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。
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